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骨粗鬆症には、それ自体には症状がありません。骨粗鬆症とは、骨強度の低下により骨折のリスクが増大する疾患ですので、程度により障害が出てきます。
重度な骨粗鬆症では骨折が連鎖するといった障害が懸念されます。報告によると、2009年ではわが国内に1280万人の骨粗鬆症の患者さんが存在すると推計されています。
高齢者は2042年まで増加すると予想されており、今後20年は患者数が増加する可能性が指摘されています。
骨粗鬆症が進んでくるにつれて、骨折が起きたときの症状について説明していきます。
骨粗鬆症によっておきる骨折の主な症状
骨粗鬆症が進むと骨折しやすい部位が出てきます。多くは転倒によって外力を受けやすい部位ですが軽微な外力でも骨折する(脆弱性骨折)ことが特徴になります。
脆弱性骨折が起こりやすい部位(イラスト矢印部位)
- 背骨の椎体圧迫骨折
- 脚の付け根の大腿骨近位部骨折
- 手首での橈骨遠位端骨折
- 肩での上腕骨近位部骨折
参考:石橋 英明、「勉強会で使える」スライド付き!防げ二次性骨折! 骨粗鬆症の治療と看護(第2回)、リハビリナース(1882-3335)18巻5号 Page462-467(2025.09)
背中や腰が痛む(圧迫骨折)
圧迫骨折は、明らかな転倒をしてからの痛みで自覚される方が多い一方で、骨粗鬆症により軽微な動作で骨折する事があります。
軽微な例
- 洗濯物を干そうとしたら背中が痛くなった
- 前かがみで草むしりしていたら腰痛続く
- せき込んでいたら腰痛続く
圧迫骨折になると痛みの症状は腰部に出ます。みぞおちの高さくらいの椎体圧迫骨折であっても臍の下の方の腰痛として感じる事もあります。
骨強度が弱い骨は、身体が前傾(後彎状態といいます)で椎体前面に荷重が集中し骨折を起こすことがあります。
圧迫骨折は適切な加療をしないで放置すると骨癒合しにくく、潰れ続けると寿命が減ってしまったり、大きな手術が必要になることもあります。早期に画像検査をしましょう。
参考:奥田玲子、「勉強会で使える」スライド付き!防げ二次性骨折! 骨粗鬆症の治療と看護(第1回)、リハビリナースリハビリナース(1882-3335)18巻4号 Page364-370(2025.07)
身長が縮んでくる(圧迫骨折)
圧迫骨折を繰り返してしまうと、身長も縮んできます。背骨が高さを失ったり、曲がってくるため身長が低くなります。
ただし、骨折以外でも椎間板が摩耗してしまい身長が低くなる例もありますので、「身長が縮んでくる≠骨粗鬆症による圧迫骨折をしている」にご注意ください。
検査すると他にも原因がみつかることがあります。身長が縮んできた場合には整形外科に一度骨粗鬆症も含めて相談されるといいです。
転んで脚が痛くて起きれない(大腿骨近位部骨折)
転倒して尻もちをつき、脚が外旋といって足の甲が外にむいて動かなくなってしまい、ご家族も大変心配され、救急車を呼んで病院に連れていかれるケースが大多数です。
大腿骨近位部に骨折がおきると、高率で手術が必要になる可能性があります。
転んで手をついたら手がパンパンに腫れている(橈骨遠位端骨折)
腕が上がらなくなった(上腕骨近位部骨折)
転倒にともない手をとっさに出したが、手首が変形してしまったり、肩を強く打ってしまうと発症します。犬の散歩で転倒したり、段差でつまずいたり、バランス崩してとっさに手や肩で壁などを受けてしまいますと骨折する例があります。
手術と保存治療(手術以外の固定やリハビリなど)で治す例があります。
骨粗鬆症が進行して重症になるとどうなる?
骨粗鬆症が進行すると、骨折しやすさがさらに増すことになります。
この状態を放置してしまうと、
① 「いつのまにか」圧迫骨折が起きて、背中が曲がり姿勢異常となる
背中をおこせなくなり前を向いて以前のように歩けない。姿勢調整のために股関節や膝関節を無理な状態にしなくてはならなくなりひどく疲れます。
姿勢異常は後彎変形と言います。これは、消化器に負担をかけて逆流性食道炎にもなりやすいです。
② 座る、立っている時間が辛くなり徐々に横になりたがる
寝たきりに近づいてしまう結果になります。
③ 骨折が連鎖していく
次々に骨折が連鎖することがあります。多くは背骨の圧迫骨折です。
この骨折連鎖を発症すると、重度の場合には立位歩行が困難になる例もあります。また破裂骨折というタイプでは、神経への障害がおきてしまい、下肢の痛みやしびれ、筋力低下を起こすことがあります。
コルセット治療やセメント注入するような手術が必要になることがあります。
④ 寿命が縮むリスクがある
脚の付け根の骨折(大腿骨近位部骨折)も起こさない方がいいです。手術が必要になるのですが、65歳以上がこの骨折を起こした場合、1年以内の死亡率は10~30%というデータも存在します*1。
また背骨が折れて、背中が丸くなる(脊椎後彎変形といいます)がひどいとどうなるかについても米国から報告があります。
610人の女性(67–93歳)を対象として、平均13.5年の追跡調査が行われた米国の研究によれば、脊柱後弯変形の増強と早期死亡には関連がありました。*2
*1 日本整形外科学科・日本骨折治癒学会「大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン(改定第3版)」(2021)
*2 Kado DM et al.Hyperkyphosis predicts mortality independent of vertebral osteoporosis in older women.
Annals of Internal Medicine. 2009;150:681–687.
骨粗鬆症になりやすい人とは?
骨粗鬆症になりやすいというのは、原因を知ると理解できるのですが、少々話が長くなります。
簡潔にまず理解したい方は以下の□の中を参考にしてください。
- 喫煙者
- 多量の飲酒をする
- 低体重
- 高齢者
- 閉経後(閉経年齢が早い、両側の卵巣を摘出している場合も)
- ステロイド内服中
- カルシウム不足(胃切除などの吸収障害の方も含む)
- 糖尿病
こんな症状に気づいたら早めに病院へ
次のような障害や状態である方や、御家族などが該当する場合は整形外科に相談しましょう。
- 高齢者が転倒し、腰がずっと痛い
- 高齢者が転倒し、手首や肩が痛い、腫れている
- 高齢者が原因なくずっと背中が痛い
- 最近背中が曲がってきたと強く感じる
- 数分~20分程度家事で立っていると、腰痛が出現しすぐ横になりたくなる
- 仰向けで寝ると腰が痛くて、横向きになっていないと眠れない
- 糖尿病やリウマチなどをお持ちの方で、骨密度が低いと指摘されるも骨粗鬆症について治療なし
- 大腿骨頸部骨折、大腿骨転子部骨折といった「大腿骨近位部骨折」を最近手術した方で、以後骨粗鬆症の治療をしていない
Q.骨粗鬆症の治療の入口に迷ってしまいます。何科がいいのでしょうか?
A.整形外科です。病院でも、クリニックでも整形外科医に相談ください。整骨院と整形外科は異なりますので気をつけて下さい。
整形外科で行う骨粗鬆症の検査・治療
検査方法
骨粗鬆症の検査としては、“骨密度検査”、採血で調べる“骨代謝マーカー”というものが一般的です。
・骨密度検査
若い成人の平均値をもとに現在の骨密度が何%にあたるかを見るYAM値というものを参考にします。
これは診断と、薬剤開始決定にかかわります。広く診療に使用されているDEXA法では腰椎と大腿骨頸部といって2か所の骨密度測定を致します。
YAM値は70%未満を骨粗鬆症といい、治療を行います。70%―80%は通常では治療はおこないません。しかし脆弱性骨折(骨粗鬆症によっておこりやすい部位の骨折)がある場合には治療を開始します。
80%以上については、通常は治療は不要です。
・骨代謝マーカー
採血検査にて、各種の骨代謝マーカーという各種マーカーを測定します。
この目的は、骨粗鬆症の病態を把握する事、適切な薬剤選択に利用する、治療のモニタリング(きちんと骨粗鬆症治療がすすんでいるか)を確認する、内服を継続すべきか休薬すべきかを判断できる為に使用します。
治療方法
治療方法には、以下のようなものがあります。
・薬剤治療
骨粗鬆症の改善には、内服薬、注射薬があります。患者さんそれぞれの年齢や、既往症、内服薬、採血結果などから総合的に医師が判断して薬を決定します。
詳しくは以下をご参照ください。
・食事療法
骨粗鬆症には生活改善や食事の変化も必要です。
栄養素を考えて、大まかにはCaやビタミンDなどの不足を補いながら、好きなものを食べて骨を強くしましょう。無理なく続けていけるように、厳密にやりすぎない事も忘れずにしてください。
食事については以下のまとめも参照ください。
・運動療法
■歩行目安
運動は、骨にカルシウムが蓄積されると言われています。1日の目安は女性6,000歩、男性7,000歩です。歩行により屋外で陽に当たるのも良い結果を生みます。
紫外線によって体内のビタミンDが活性化し、結果的にカルシウムの吸収が高まっていきます。
1日15-30分程度陽に当たるのを勧めます。ただし、暑い時期は無理しないでください。
■ロコトレ*1
骨粗鬆症に対する高負荷のレジスタンストレーニングというのが腰椎、股関節部(大腿骨)の骨密度を改善させることがわかっています。*2
ロコトレとは、ロコモーショントレーニングというものです。ロコモでピンと来た方はそうです。
片脚で40センチの椅子から立ち上がれますか?がロコモを疑うきっかけになります。
レジスタンス、バランストレーニングを混ぜて、ロコトレとして紹介します。
(左図)転倒予防のために、支えるものがある場所で行う
椅子に危ないとき以外は手をつかず、脚は床につかない程度から、前に片脚を上げる
目安:左右とも1分間で1セット、1日3セット
(右図)足を肩幅に広げる。殿部を後方へ引くように、2〜3秒かけて膝を屈曲し(膝がつま先より前に出ないように)、ゆっくりと元に戻るスクワットをします。
目安:5〜6回で1セット、1日3セット
(注意)支えが必要な方は、机や椅子などに手をついて行う形でかまいません。
スクワットは膝が90度を大きくこえないように。曲げすぎ注意です。
参考文献:
*1【骨粗鬆症と転倒(解説)、和田 崇ら、The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine(1881-3526)62巻1号 Page10-16(2025.01)
*2Kitsuda Y, et al.Impact of high-load resistance training on bone mineral density in osteoporosis and osteopenia: a meta-analysis.Journal of Bone and Mineral Metabolism. 2021;39:787–803.
まとめ
骨粗鬆症は、大学病院では専門の医師も診療しており、私を含めた脊椎外科医は特に深い知識と強い関心をもって治療にあたっています。
これは、骨粗鬆症が原因で起こる圧迫骨折による神経障害の手術を多く担当し、また背骨の手術において良好な結果を得るために骨粗鬆症管理が非常に重要だからです。
治療の効果が骨密度や血液検査といった数値で分かりやすく現れるため、患者さまにも改善を実感していただきやすい領域です。
複雑な病気をお持ちの方や、骨粗鬆症治療を行っても骨密度が上がらないといった方の場合は、大学病院の骨粗鬆症専門の先生に紹介を行っていく中間の役割も果たしていきます。
骨を健康に保ちたいとお考えの方は、ぜひ一度沼口までご相談ください。
監修
整形外科専門医Dr.沼口大輔
| 2006年 | 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修) |
|---|---|
| 2008年~ | 東京女子医科大病院整形外科 入局 千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む |
| 2013年 | 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得 |
| 2016年 | 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得 |
| 2016年~ | 東名厚木病院 医長 脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる |
| 2019年 | 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得 |
| 2024年~ | 千葉県内 救急病院に入職 |
| 2025年 | 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得 |
Incidence of Remote Cerebellar Hemorrhage in Patients with a Dural Tear during Spinal Surgery: A Retrospective Observational Analysis
Spine Surgery and Related Research 3巻 2号
発行元 Spine Surgery and Related Research
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