手の指が痛い!症状や考えられる原因・病気、受診すべき目安など

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手指の関節炎は他の関節炎と比べて、時にはリウマチの可能性がないかを疑うきっかけになることもあり整形外科の診察としては重要な部分です。
では手指の関節の痛みについて説明していきます。

手指の関節の痛みの症状とは?

手指の関節痛は、以下の症状を伴うことがあります。

  • 痛み
    関節可動時に感じる痛みや、じっとしている時に感じる痛み
  • 腫れ
    関節部の腫脹
  • こわばり
    指の動かしにくさ。朝に強い傾向があると関節リウマチを疑うきっかけになる事もある
  • 変形
    関節の形状変化
  • 熱感
    指の痛みのある部位が熱を持つ

手指の関節の痛みで考えられる病気・原因は?

手指の関節の痛みで考えられる病気・原因は?

画像引用:「メノポハンド」を知っていますか。女性に多い手指の痛みやしびれには予防対策があります | 公益社団法人女性の健康とメノポーズ協会

関節リウマチ(膠原病)

関節リウマチ(膠原病) A:指の水かきより先の関節(PIP関節と言います)そこが2-5指全てで炎症により変色しています。 B:リウマトイド小結節という病変がPIP関節に見られています。

文献:関節痛から疾患を考える 「手指の痛みで考えるべき疾患とその鑑別法」 石川肇(新潟県立リウマチセンター)

関節リウマチ(RA)は、免疫異常によって関節に炎症が生じる膠原病です。推定患者数は約70~80万人で、男女比は1:4と女性に多く、30~50歳代に発症のピークがあります。特に手指の小関節が腫れ、朝のこわばりがみられることが特徴です。

進行すると関節の変形や機能障害を引き起こします。診断には、血液検査(リウマトイド因子・抗CCP抗体)や画像検査(X線・MRI・超音波)が用いられます。

へバーデン結節・プシャール結節

へバーデン結節・プシャール結節 A、爪に近い関節(DIP関節)が炎症の末に変形 B:炎症が強い時期は、ふくらみを持つ粘液嚢腫(ミューカスシスト)が現れることがあります。

文献:関節痛から疾患を考える 「手指の痛みで考えるべき疾患とその鑑別法」 石川肇(新潟県立リウマチセンター)

へバーデン結節はDIP関節、ブシャール結節はPIP関節に生じる変形性関節症で、中高年の女性に多く見られます。

関節の腫れや痛み、指の変形が特徴で、加齢や遺伝、ホルモン変化が原因とされています。診断は問診や触診、レントゲン検査で行い、特にDIP関節で関節炎が起こることが特徴です。

・DIP関節、PIP関節って何?
指にはめる指輪をイメージしてください。最初に通るぼこっとした関節がDIP関節。2回目に通る関節がPIP関節です。

乾癬

乾癬 A:腫脹して、指の腫れが起きてソーセージ様になる B:白色鱗屑といって爪の変形や剥脱がみられる

乾癬(かんせん)は皮膚に紅斑や鱗屑が生じる慢性炎症性疾患で、関節にも炎症を引き起こすことがあります。これを乾癬性関節炎といい、手指の関節に痛みや腫れ、こわばりが現れることがあります。

発症は20~50代に多く、男女ともに見られます。診断には皮膚症状の確認、関節の評価、血液検査、X線やMRIなどの画像検査が用いられます。

骨折・突き指

指の骨折や突き指には多くの種類があります。指は母指が2つ、示指から小指は3つの節で構成され、それぞれ末節骨・中節骨・基節骨と呼ばれます。
骨折は①末節骨骨折、②中節骨骨折、③基節骨骨折と分類されます。

また、拳で硬いものを殴ると手の甲の骨である④中手骨骨折が起こりやすくなります。突き指など他にも多くの骨折の亜型がありますが、詳細な分類は省略します。

骨折・突き指

メノポハンド

メノポハンドは正式な医学用語ではなく、「更年期(Menopause)の変形性手指関節症」に近い概念です。
更年期の女性は手の変形や関節症を経験しやすく、特に手の美しさを大切にしてきた方にとって関節炎や変形は大きな精神的負担となることがあります。

保険医療の制約はありますが、できる限り最新の治療選択肢を提示したいと考えています。
具体的な病名としては、へバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症があり、エストロゲン減少が関与するとされています。滑膜の炎症が引き金となる可能性が指摘され、ホルモン補充療法も注目されています。

手指の関節の痛みで病院を受診すべき目安

手指の関節の痛みで受診を検討すべき場合

関節リウマチの可能性があるため、以下の症状があれば早めに受診しましょう。

  • 冷やしても腫れが引かず、痛みが続く
  • 痛みが移動する
  • 朝のこわばりを感じる
  • ソーセージのような腫れがある

手指の外傷で注意すべきポイント

  • 骨折すると皮下出血や指の動かしづらさが現れる
  • 皮下出血がある場合は、単なる突き指と判断せずレントゲンを撮ることが重要
  • 骨折の可能性が高いため、専門医の診察を受けましょう

指の関節が痛い時は、何科の受診がいい?

手指の痛みで受診すべき診療科

手指の痛みがある場合、基本的には整形外科を受診するのが一般的です。特に手外科の専門医は、整形外科医と形成外科医の両方が担当することがあります。

整形外科医は関節や骨の治療を中心に行い、形成外科医はマイクロサージャリーや再建手術を専門としています。診断や治療の内容によって適切な診療科が異なるため、症状に応じた医療機関を選ぶことが重要です。

医療機関に行く前に自分で出来る対処法はある?

医療機関に行く前に手指が痛い場合には、まず冷却をしていくといいでしょう。
テーピングがあればテーピングでもよいのですが、巻き方が難しいという方もいると思います。
以前にアイスの棒に指を巻き付けて安静をとりながら病院にいらした方もいました。痛みがあまりにもひどい場合にはそのような簡易的な添え木もいいでしょう。

手指など関節の痛みに詳しい病院・整形外科を探すには?

手指の痛みがある場合、まずは整形外科を受診することが大切です。手指の専門医を探したい場合は、日本手外科学会の手外科専門医名簿を参考にするとよいでしょう。

ただし、多くの疾患は日本整形外科専門医が対応可能です。まずは通いやすい整形外科を受診し、状態に応じて手外科専門医へ紹介してもらう方が無駄を省けて、利便性が高く、適切な治療を継続しやすくなります。

かかりつけや症状別の整形外科の選び方とは?整形外科医が解説

【疾患別】手の指の関節が痛い場合の治療法

関節リウマチ(膠原病)

関節リウマチの治療は薬物療法が基本です。以前は抗炎症剤(ステロイド剤、非ステロイド剤)や金製剤が中心でしたが、2000年頃からメトトレキサート(リウマトレックス)が使用可能となり、その後、生物学的製剤(エンブレル、アクテムラ、ヒュミラなど)の登場で治療が進化しました。

さらに、分子標的型低分子化合物であるJAK阻害薬(ゼルヤンツ、オルミネント、スマイラフなど)が発売され、治療の選択肢が広がっています。

へバーデン結節・プシャール結節

へバーデン結節・プシャール結節
へバーデン結節・プシャール結節

画像引用:
森整形外科リハビリクリニック
運動器の痛み-その診断と治療- 手指および手関節の痛み 中村俊康

へバーデン結節とブシャール結節は指の変形性関節症で、DIP関節に生じるものをへバーデン結節、PIP関節に生じるものをブシャール結節といいます。
へバーデン結節では爪近くに粘液嚢腫(ミューカスシスト)ができ、痛みを伴います。

水膨れは針で刺しても再発しやすいですが、小さい場合は固定で改善することもあります。治療には固定、内服薬、ステロイド注射があり、発症に女性ホルモンとの関与が言われておりエストロゲン様作用(エクオール)を併用する選択肢も注目されています。

乾癬

乾癬の治療法は大きく以下の4つに分けられます。

  1. 外用療法(塗り薬)
    • 紅斑(皮膚の赤み)や鱗屑(銀白色のフケ状のもの)に対して使用。
    • 主に皮膚科で処方される。
  2. 光線療法(紫外線照射)
    • 皮膚の炎症を抑えるために紫外線を照射する治療法。
    • 外用療法と併用されることが多い。
  3. 内服療法
    • 関節の痛みや全身の皮膚症状に対して使用。
    • 免疫を調整する薬剤が含まれる。
  4. 生物学的製剤
    • 重症例に適用される注射薬。
    • 免疫の働きを制御し、症状を改善する。

まとめ

「痛みやしびれがもっと楽になれば、笑顔を取り戻せるのに」そんな患者さんの“悔しさ”を変えたくて診療してきました。
全身の整形外科手術をしてきた専門医として、MRI検査を合わせれば私の能力が最大限発揮でき患者さんに説明できると考えています。近隣のMRIがなかなかとれない病院やクリニックで困っている方へ、当クリニックで検査と説明、治療をどうぞご検討ください。

手首などは見えにくい骨折に舟状骨骨折というものもあるのと、見えにくい障害にTFCC損傷という障害もあります。レントゲンに写りにくく、指は靭帯損傷も多くMRIの効果は出やすい部分です。

救急病院にて沢山の難治例の治療経験もありますので、生まれつきの障害や過去の手術後の機能回復が厳しい方もあきらめずに一歩一歩を大事に、“悔しさ”を笑顔に変えていきましょう。

監修

整形外科専門医 Dr.沼口大輔

整形外科専門医Dr.沼口大輔

大学 2006年 東邦大学医学部卒 2025年 早稲田大学 大学院経営管理研究科(MBA)修了
資格、学位 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医 MBA(経営学修士)
職歴
2006年 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修)
2008年~ 東京女子医科大病院整形外科 入局
千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む
2013年 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得
2016年 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得
2016年~ 東名厚木病院 医長
脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる
2019年 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得
2024年~ 千葉県内 救急病院に入職
2025年 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得
学術活動

原著論文1

Incidence of Remote Cerebellar Hemorrhage in Patients with a Dural Tear during Spinal Surgery: A Retrospective Observational Analysis. 2019/04

症例報告

C5/6 hyperflexion sprainの1例 2018/06

原著論文2

環軸関節亜脱臼の診断におけるトモシンセシス撮影の有効性 2017/08

原著論文3

人工股関節全置換術を要した遅発性脊椎骨端異形成症の1例 2012

学会発表

  1. 強直性脊椎骨増殖症に発生した頚椎骨折に対して、前方固定術を施行した1例 (口頭発表,一般)
  2. MRI矢状断像における椎間孔部での狭窄の分類 (口頭発表,一般) 2013/04/25
  3. 脊椎手術において2本ドレンを留置することは術後の血腫による麻痺を防ぐことができるか (口頭発表,一般) 2013/04/25
  4. 椎体骨折偽関節症例に対するBalloon kyphoplasty施行後の隣接椎体骨折危険因子に関する検討 (口頭発表,一般) 2013/04/25
  5. 肩甲上神経絞扼を認めた肩甲切痕部ガングリオンの1例 (口頭発表,一般) 2012/06/23
  6. 外反母趾術後に出現した足底部痛の1例 (口頭発表,一般) 2010/11/16