かかりつけや症状別の整形外科の選び方とは?整形外科医が解説

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整形外科をみなさんが探すときはどんな場合でしょうか。

  • スポーツでのケガをしたとき
  • 交通事故
  • 長年の関節の痛みが悪化してきたとき
  • 転居に伴って以前からの薬が必要で、医師を代える必要があるとき
  • 今までかかりつけだった整形外科クリニックが閉院したとき

何を基準に、どうやって選べばいいか、それについて伝えます。

整形外科はどこも同じではない?

整形外科の受診について、ポイントを述べます。

1.整形外科の先生は実は能力が違う

整形外科は広い分野ゆえ医師それぞれの得意な分野は異なり、医師の成長も異なります。

大学病院では、複数に班が分かれており、班の構成はパーツごとに脊椎(頸椎から腰椎まで背骨)、肩、肘、手、股関節、膝、足と分かれます。さらに骨腫瘍、外傷、リウマチとパーツ以外にも班が存在し、統合して一つの整形外科として存在する集団です。

患者さんが行く病院やクリニックで出会う整形外科医師は能力に個人差があって当たり前で、そこでは選ぶ必要があります。

2.かかりつけの医師を2つ決めるといい

かかりつけ医を2つ持つことを勧めます。よく利用するクリニックの医師と、紹介先として頼れる病院の医師を選ぶとよいでしょう。

理由として、診療時間の違いが挙げられます。多くの病院では17時ごろから救急体制となり、整形外科外来やリハビリ部門が閉まるため、救急時間帯ではリハビリや専門治療を受けられません。

一方、クリニックは17時以降も診療を行うところが多く、社会人や学生が通いやすい環境です。
診断や手術、複雑な検査は病院で日中に行い、仕事後のリハビリや薬の処方はクリニックを利用するのが効率的です。

3.自分のニーズは何かを知り、それに合致した整形外科医を見つける

これはとても簡単ではないですが、医師に限ったことではありません。人と人がかかわる専門職、例えば身近な例として美容師を挙げます。
とてもカットが上手と紹介されている人だから選ぶ(能力が高いから選ぶ)方もいますし、クチコミをみていいと思って選ぶ方や話しやすい人を選ぶ方、近いサロンだからと距離で選ぶ、値段で選ぶ方もいるでしょう。

医師についても同じように様々な観点から自分に合った整形外科医を選んでください。

整形外科の7つの選び方

では、整形外科を選ぶのに、選び方はどうすると望ましいかお答えいたします。
ポイントとしては距離、整形外科医がいるクリニック、専門性、リハビリの対応範囲などを考えるといいです。

1.距離(通いやすさ)

通いやすさがなぜ良いかと言うと、端的に「患者さんと医師やPT(理学療法士)が固定しやすく、患者さんの治療上メリットが多いから」です。

整形外科で扱うものはリハビリやケガが重いと頻繁に通う事が多くなります。車を使うならば駐車場の有無はチェックしましょう。地方の病院の場合などには路線バスがあるのでそれも利用しましょう。
急な痛みよりも、以前からある痛み(慢性的な痛み)を取る事の方が時間がかかります。

距離が遠いといった通いにくい条件で通っている場合、曜日がまちまちで来院していると診察している医師が毎回変わってしまいます。同じ先生やリハビリ担当(PT)で進まれる方が、毎回顔ぶれが変わっている方よりいい治療やコミニュケーション、説明納得感を得られると感じています。

方向性は同じ説明でも、説明者が変わるとニュアンスが変わってしまい混乱することがあると考えています。

2.整形外科医がいるクリニック

整形外科と書いてあっても、整形外科医の先生だけが必ずいるとは限りません。まず標榜している順をよく見ましょう。
医師は自信がある分野を一番最初にもってきている所が多いです。

つまり“内科、整形外科”とかかれていれば、メインは内科で整形外科もメインでないが研修をしたりして並行してやってきたことが多いです。整形外科も勿論見れます。

整形外科で修業した先生が多く標榜する形は“整形外科、リハビリ科”です。整形外科外来を長くやってきていることもあり、整形外科領域の障害は整形外科の修業をメインでしてきた先生に相談する方が理解しやすい答えに近くなります。

3.医師の専門性

医師の専門性は重要で、病院ではプロフィール欄に「専門」と記載があることが多く、クリニックでは所属学会を確認すると得意分野が分かります。例えば、「日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会」とあれば膝関節やスポーツ分野が専門です。

また、自分の症状がどの分野に該当するかわからない場合、「症状×診療科」でインターネット検索するのが有効です。

医療機関では受付スタッフが診療科を振り分けることもありますが、必ずしも専門医に繋がるとは限りません。確実に専門医に診てもらいたい場合は、事前にインターネットで調べ、電話で確認することを勧めます。専門性を見極めて適切な医師を選ぶことが、より良い治療につながります。

4.コミュニケーションがとりやすい

整形外科医を選ぶ際には「相性」を重視し、苦手な医師に時間を費やすことは避けるべきです。合わない場合は看護師や事務スタッフに相談して変更を伝えると良いです。

医師への不満の多くは「説明不足」「話を聞かない」「不誠実な態度」などが原因で、患者の気持ちを理解し受け止めることが重要です。医師選びではGoogleの口コミが参考になりますが、情報には偏りがあることを念頭に置き、俯瞰的な視点を持つことが大切です。

利便性を仮に優先する場合、多少の不満があっても「近いから、自分が選んだから」と予想範囲内として納得できるでしょう。
最終的には複数の要素を比較し、自分に合う医師やクリニックを選ぶことがポイントです。

参考:患者と医療者のより良いコミュニケーションを目指して

5.設備や対応できる検査

設備や検査について説明します。自費診療クリニックと保険診療クリニックでは検査設備に差があります。
自費診療クリニックは最新設備を導入している場合がありますが、医学的エビデンスが不十分な流行の技術も含まれることがあります。

整形外科では自費診療のみのクリニックは少なく、保険診療クリニックが一般的です。保険診療クリニックの設備では、MRIや運動器リハビリが大きな特徴です。CTとMRIは役割が異なり、CTは骨折確認や手術前シミュレーションに適しており、特に大病院で効果を発揮します。

一方、MRIは施設数が限られており、平成23年の厚生労働省報告によると診療所で33%、病院で67%が保有しています。診療所でのMRI撮影は少ないのが現状です。

参考:
被ばくについて小児CTガイドライン
医療機器の配置及び安全管理の状況等について MRIの保有数について

MRIが撮れるクリニック

MRIは2020年の時点で、日本には7,000台以上のMRI装置が稼働しています。近似したデータでは、MRI装置は病院で約5,000施設程度、クリニックは約2,000施設程度と想定されます。

クリニック全体が約100,000施設なのでその2割程度と考えられます。
8割以上のクリニックではMRIを置いていないのでMRIには希少価値があります。

MRIの重要性についてですが、MRI(Magnetic Resonance Imaging、磁気共鳴画像法)とは、特に軟部組織(脳、筋肉、関節、血管など)の検査に優れています。
整形外科にて主に利用しやすい分野として以下が挙げられます。

  • 脊椎と脊髄
    椎間板ヘルニア、神経狭窄(頚髄症、胸髄症、腰部脊柱管狭窄症など)
    転移性脊椎腫瘍
  • 筋骨格系
    関節疾患、筋損傷、靭帯損傷

6.リハビリを受けることができる

整形外科に行くと期待される治療の選択肢として、リハビリを挙げる方は多いと思います。
リハビリというのは、大別すると物理療法、運動療法に分かれます。
そのリハビリの組み合わせができるかできないがそれぞれの医院にて異なるため、どこも同じリハビリ内容ではございません。

物理療法とは、機械や温熱機材が主でリハビリを行うもの。運動療法については、リハビリ担当のPT(理学療法士)がついて行う関節の可動域訓練や姿勢調整、筋力トレーニングなどです。
物理療法は機械と向き合ったリハビリなので、なかなか効果がないと感じているとそのままやり続けるのは苦痛となってきますが、それでもリハビリをしていますと標榜はできてしまいます。

これは施設の基準や、PTの人材確保の問題があるので、物理療法が悪いともいいませんが運動療法やっている施設かの確認はした方がいいと考えています。
運動療法ができるクリニックは物理療法もできることが一般的です。(機械がまったくないという場合はないので)

リハビリがないクリニックも存在します。駅近くでビルの1室でやっているような場合にはそのような検査、診断、内服がメインのクリニックになります。そのクリニックでリハは望めないため、希望の場合には他院に紹介してもらうのがいい方法と考えられます。

7.手術にも対応している

大きな手術ができる医療機関は、入院施設がある病院と入院施設があるクリニックに限られます。
皮膚科などの小さな(出血量が少ない、表面に近く浅い)手術に関しては入院施設がないクリニックでも可能です。
整形外科では手術は大きい深い傷が必要となるものが多いので、手術は病院に紹介する事が多いです。

手術にも対応している病院のメリットについてですが、カンファレンスが挙げられます。
これは手術するべきかどうか治療方針を迷ったときなどに、整形外科医師全員で意見を交わして妥当な答えを出せるところです。

症状別の整形外科の選び方はある?

症状によって整形外科の選び方はあるかについてですが、軽い痛みはクリニック整形外科がいいという原則があります。
しかし、痛みが悪化する場合や、リハビリや注射をクリニックでしても何も変わらない時には、MRIを含めてそのクリニックにないならば病院へ移動する希望を出していくのもいい判断だと思います。

また、痛みとともに発熱している場合には、膠原病や感染症(化膿した関節炎または、腰の椎間板に感染しているなど)がおきることもあり検査をよくしてくれる整形外科クリニックまたは病院で、精密検査をしていくといいです。

採血については、クリニックで採血結果が出るよりも病院の方が速く結果が揃うので、迅速な対応ができます。
これは、院内に採血検査機関があるかどうかの差で、クリニックは外注していることが多いので時間がかかってしまう例が多いです。

交通事故でのケガの治療における病院の選び方

交通事故では、まず近いところでかかるのは重要です。
痛いときに、遠くは難しいので通いやすさは重要な因子です。大概の交通事故の痛みは打撲、捻挫の範疇であれば時間と共に痛みが和らぎ、医療機関の変更は不要な例が多いです。

しかし、末梢神経障害といって、打った部位から末梢(肩をぶつけたら末梢は指先ということです)がしびれてくるような異常感覚が取れない時などは、MRIを必要とすることもありますので、MRIがある医療機関にかかっていくこともいい判断です。

整形外科と整骨院との違いは?

整形外科の選び方に関するよくある質問

2つ以上の整形外科に通うことは問題ないですか?

隠れて複数の医療機関に通うことは可能ですが、推奨されません。理由は治療費の増加と患者自身の混乱を招くためです。

整形外科医師の治療方針は大きく変わりませんが、説明のニュアンスが異なるため、複数の施設に通うことで患者さんが最終的に混乱します。
一方で、同じ病院内で異なる専門外来(例:股関節外来と脊椎外来)を利用するのは問題ありません。
特に専門医が診察を行う場合、それぞれの専門分野の範囲内で診察が行われるため、説明が重複せず、患者の混乱を避けることができます。これにより、患者は複数の悩みを効率的に解決できます。

整形外科と整骨院・接骨院・整体はどれを選べばいいですか?

整形外科の選び方については、以下のリンクをご参照ください。

整形外科と整骨院との違いは?

かかりつけやお悩みの症状で整形外科をお探しの方は、一度ご相談ください!

「痛みやしびれがもっと楽になれば、笑顔を取り戻せるのに」そんな患者さんの“思い、悔しさ”を変えたくて診療してきました。

MRI診断の正確性と迅速性を何よりも重視しています。なぜなら、長年手術を続けてきた医師は、MRI画像を単なるデータ以上の「武器」として捉え、実際の手術現場で得た経験から画像の真価を引き出す独自の視点を持っているからです。
実際、私もMRIで捉えた世界と手術現場でのリアルな状況を照らし合わせ、診断精度を絶えずブラッシュアップしてきました。
しかし、患者さんが誰にMRIの解説を任せるかはなかなか判断しづらいのが現状です。だからこそ、画像と手術現場の両面に精通した者にご相談いただきたいと考えています。私は皆さんをお待ちしております。

監修

整形外科専門医 Dr.沼口大輔

整形外科専門医Dr.沼口大輔

大学 2006年 東邦大学医学部卒 2025年 早稲田大学 大学院経営管理研究科(MBA)修了
資格、学位 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医 MBA(経営学修士)
職歴
2006年 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修)
2008年~ 東京女子医科大病院整形外科 入局
千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む
2013年 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得
2016年 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得
2016年~ 東名厚木病院 医長
脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる
2019年 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得
2024年~ 千葉県内 救急病院に入職
2025年 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得
学術活動