目次
扁平足は良く馴染みがある言葉の一つかと思いますが、どうして起きるのか、どう直したらいいのかについて説明いたします。
扁平足とは
扁平足は、足のアーチ構造が破綻し、土踏まずが消失してしまったものです。大人や子供でも起こりうるもので原因が異なります。
小児期扁平足
小児の扁平足は外来でよく親御さんが相談に来ます。経過観察で良いものから治療を要するものまであります。多くの場合には成長とともに改善され、10歳までに成人と同等の形態になります。
2016年に小学校3年生~中学生までの584名の足部形態を追跡した研究では、119名の外反扁平足(踵も傾いていく一般的な扁平足)が確認できています。
外反扁平足のままで成長していく児童は、“肥満”傾向であることが一因と挙げられています。肥満を治せば扁平足が治るとは言い切れないですが、影響の一つなので、この障害で悩むならば、肥満を改善するのはいい試みです。
参考:小中学生における足部形態の経年変化に関する後ろ向きコホート研究 日整会誌 95(3)2021
成人期扁平足
大人になってから生じる成人期扁平足は、後脛骨筋腱といってアーチ構造を支える腱の変性・断裂により起こるものが多いです。
踵が内側に傾いていくのが特徴で、主に足の内側に腫れや痛みを生じたり、足の疲れやすさを感じやすくなります。
なぜ扁平足になる?原因は?
扁平足になる原因ですが、大別すると以下のように分けて私は診察をしています。
| 小児 |
|
|---|---|
| 後天性(成人) |
|
先天的な要因
先天的な要因(生まれつきの足部変形)で扁平足であるのは、先天性垂直距骨という病気です。舟底変形という足の変形になります。発生は1万人に1人であり、先天性の足部変形の4%以下と言われています。遺伝子の異常や胎児期の発育障害が原因に挙げられています。
後天的な要因
小児期の後天的扁平足
小児期の後天的な扁平足は、多くは成長の一時的なものです。ご両親が「ペタペタ歩く、転びやすい」といった相談をしてくることが多いです。10歳までにアーチ形成されていく可能性があるので、成長を見守る事も行うことがあります。
前述した通り、584名の足部形態を追跡した小児の研究では、119名の扁平足が確認できています。扁平足のままで成長していく児童は、“肥満”傾向であることが一因と挙げられています。
成人の後天的扁平足
成人の後天的な扁平足では、後脛骨筋といった内側アーチを保持する筋力の低下が原因の主と考えられています。肥満の中高年女性に多いと言われています。
参考:雑賀建多:関節外科 Vol.43(2024)
扁平足の症状
扁平足の症状は、小児期であれば「ペタペタ歩く、転びやすい」といった症状に加え、疲れやすさや痛みを訴える場合もあります。
成人であれば、扁平足単体ではなく外反母趾や開帳足などを合併していることが多いです。胼胝(タコ)をはじめとして、足の変形を多数持っている状態なので症状は多彩です。
扁平足の検査・診断
扁平足は診察所見とレントゲンで評価していきます。
レントゲン評価では距骨第一中足骨角(Meary angle)と、calcaneal pitch angle(CPA)というものを測定します。
扁平足の治療方法
扁平足は保存治療が厳しければ、手術を検討していく形になります。
保存療法
扁平足はしなやかに動くかどうかで加療方法が変わります。動かない場合は手術を、動く場合には保存療法を考えるのが一般的です。
運動療法は初期には効くため行いますが、治療の主は装具療法になります。良く知られているのがアーチサポート(インソール)です。矯正効果を高めるためには、インソールの硬さも重要です。
手術療法
しなやかに動く扁平足であっても手術を検討するタイミングとしては、足の内側が傾いて倒れる事で出現有痛性胼胝(タコ)や皮膚潰瘍がある場合です。また、足の踵が内側に倒れてくるので、外側の踵では外くるぶしとぶつかって疼痛がひどくでている場合です。足関節の専門の先生が行う手術となり、三関節固定術という手術を行います。
画像参考:安井哲郎、手術療法の立場から Loco Cure vol.10 no.1 2024
扁平足を放置するリスク
扁平足自体は、小児から大人までに見られるので親しんでいるが、問題は急速に成人になってからの破壊進行であると考えています。扁平足と合併して、外反母趾が進行して悪化したり、胼胝(タコ)が発生して「靴が履けなくなる、合わなくなる」事が問題と考えています。
まとめ
「痛みやしびれがもっと楽になれば、笑顔を取り戻せるのに」——そんな患者さんの悔しさを変えたくて診療を続けてきました。
整形外科専門医として神経(脊髄)の治療に精通し、高速道路近くの救急病院や大学病院で18年間診療を行ってきました。
歩行が長く、きちんとできる事は満足した生活に関わると考え、足の治療を学びなおそうと足専門クリニックでも診療を続けてきました。海外に比べ日本では、成人や子供の足障害の啓蒙活動が足りない事を痛感し、インソールや運動療法に興味を持って取り組んできました。
装具技師とタイアップして精度を高めたインソール治療についてもぜひ一度ご相談ください。
監修
整形外科専門医Dr.沼口大輔
| 2006年 | 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修) |
|---|---|
| 2008年~ | 東京女子医科大病院整形外科 入局 千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む |
| 2013年 | 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得 |
| 2016年 | 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得 |
| 2016年~ | 東名厚木病院 医長 脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる |
| 2019年 | 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得 |
| 2024年~ | 千葉県内 救急病院に入職 |
| 2025年 | 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得 |
原著論文1
Incidence of Remote Cerebellar Hemorrhage in Patients with a Dural Tear during Spinal Surgery: A Retrospective Observational Analysis. 2019/04
症例報告
C5/6 hyperflexion sprainの1例 2018/06
原著論文2
環軸関節亜脱臼の診断におけるトモシンセシス撮影の有効性 2017/08
原著論文3
人工股関節全置換術を要した遅発性脊椎骨端異形成症の1例 2012
学会発表
- 強直性脊椎骨増殖症に発生した頚椎骨折に対して、前方固定術を施行した1例 (口頭発表,一般)
- MRI矢状断像における椎間孔部での狭窄の分類 (口頭発表,一般) 2013/04/25
- 脊椎手術において2本ドレンを留置することは術後の血腫による麻痺を防ぐことができるか (口頭発表,一般) 2013/04/25
- 椎体骨折偽関節症例に対するBalloon kyphoplasty施行後の隣接椎体骨折危険因子に関する検討 (口頭発表,一般) 2013/04/25
- 肩甲上神経絞扼を認めた肩甲切痕部ガングリオンの1例 (口頭発表,一般) 2012/06/23
- 外反母趾術後に出現した足底部痛の1例 (口頭発表,一般) 2010/11/16

