体の痛みで整形外科や整骨院にかかりたいと思うことは多いと思います。名前が似ていて、治療の差があるのかもわからず判断に迷う方も多いと思います。
整形外科と整骨院は同じ時期に通ってはいけないの?いいの?と疑問も多いと思います。
以下は主な例で、参考にしてもらい整形外科や整骨院への受診を検討してみてください。
- 交通事故に遭って全身に痛い部位ができた。
- スポーツで足首をひねって痛くて歩けない。
- 歩けば膝の内側がいたい。
- 転んで尻もちしてから、背中がすごく痛い。
- 寝違えて首が痛い。
- 肩こりがひどい、肩こりで服が着にくい。
- 歩くと脚が重だるく、しびれる。
- 転んで関節が腫れている。
- 骨粗鬆症といわれた。
目次
整形外科と整骨院の違い
整形外科 | 整骨院 |
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*2 医道の日本社(公式サイト)~鍼灸、漢方、マッサージ、指圧、東洋医学~
整形外科と整骨院の違いは、資格、治療対象、治療方法、保険適応の範囲、書類作成の点が異なります。痛みやしびれが始まって、原因を調べ治療を希望する方や手術については整形外科へ。
昔に診断されて定期的に繰り返す痛みの方は、筋緊張を解くなどが上手な整骨院は向いています。
薬や注射で副作用が心配な方も整骨院に向いていると思います。
整形外科(病院)とは?
整形外科とは以下のイメージです。
- 資格
医師さらに日本整形外科学会の認定専門医を取得した者が“整形外科専門医”と標榜できます。 - 治療対象
治療対象は骨折、捻挫、慢性疾患、リウマチ、痛風、骨粗鬆症などです。
慢性疾患は四肢の関節の軟骨がすり減る病気(変形性関節症)、腰部脊柱管狭窄症が有名です。
椎間板ヘルニアや腰、首や肩の急な痛みや交通事故のケガも対応しています。 - 治療方法
検査、治療をします。検査はレントゲン、CT、MRI、採血や骨密度検査があります。治療は薬処方、注射、リハビリ、手術などです。 - 保険の適応範囲
主に保険診療で、各健康保険に応じ1割~3割の負担額です。自由診療は保険適応外の治療ですべて自費負担です。 - 作成書類
様々な書類申請ができます。交通事故、後遺症の診断書、身体障害者の診断書や労災書類、介護保険意見書などです。
整骨院(接骨院)とは?
整骨院とは以下のイメージです。
- 資格
柔道整復師 鍼灸師免許を併せ持つ方もいます。 - 治療対象の違い
保険適応の範囲は狭く、自費治療をしています。 - 治療方法の違い
検査、注射、薬は出せません。マッサージや電気治療が主の施術で、ケガや筋肉の痛みを治療します。 - 保険適応の違い
保険医療機関とは異なるが医療類似行為が可能です。保険適応には医師の同意が法律上必要です。
保険適応は、骨折、不全骨折、脱臼です。応急手当は医師の同意がなくとも適応です。医師同意が前提なのは、画像検査や専門家治療が後手に回るといけないので(後遺症が残るなど)、医師から整骨院への流れにすることが整骨院側や患者様も安心する仕組みだと思います。
保険適応範囲外で、マッサージや鍼灸(鍼灸師資格があれば)を自費診療で行う事があります。例として頭痛や冷え性、脊柱矯正などに行う施術は、自費負担です。 - 作成書類の違い
書類は一切作成できません。
厚生労働省|柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて
【ケガ・症状】整形外科と整骨院はどっちに行くべき?
数年に一度ですが、はやくに検査をすべきなのに後手に回ってしまった例を経験することがあります。私見もありますが、最初が凄く肝心だという観点で考えました。
患者さんの悪化を防ぐ観点から、まずケガなどが発症した早期の判断や対応は以下のような形をすすめます。
状態 | 判断 | 理由 |
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捻挫・打撲 |
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靭帯損傷の可能性 |
ぎっくり腰 |
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診察や検査を行い、違う病気がないかを調べるべき |
肉離れ |
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整形外科で投薬されると、除痛が早いこともある |
脱臼、骨折疑い |
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速やかに検査をすべき |
寝違え |
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整骨院の方が筋肉をほぐす事はできる 注意:もみ返しがある場合もあり、タイミングも大事 |
五十肩 |
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検査必要。腱板といって筋肉の断裂がないかみる 注意:腱板断裂なら手術もありえる |
腰椎ヘルニア |
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神経にまつわる事なので検査を絶対にした方がいい 注意:検査が遅れ、麻痺の悪化 |
外反母趾 |
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腱鞘炎 |
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検査の必要性や投薬、注射が使える |
スマホ首、ストレートネック |
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首の痛みは最初に画像撮影はきちんとしたほうがいい |
交通事故のケガ |
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検査をしないと後々不利になる。書類作成上も困る |
交通事故によるケガ
対応:整形外科受診を勧めます。
理由:検査、診断が遅れると、防げた後遺症事例がおきることがあるからです。
診断の遅れは手術が必要な骨折の場合、難易度も上がります。
検査と加療を始めて、追加で整骨院を併用した方がいいと思います。
別の理由は書類作成です。整骨院は書類を書けません。交通事故は都度書類を提出しないと自分が困りますので定期的に受診してください。
整形外科と整骨院は併用できない?
原則:同部位の治療で整形外科、整骨院ダブル
健康保険はアウト
重要原則があります。ダブルでの保険適応は医療費が増え、整骨院が自費扱いになります。
混乱するのは健康保険なのか、自費なのか、交通事故の財源なのかなどの掛け合わせがあるからです。
ざっくりと両方をまたいで両方を同時や部分的に利用する場合になるのは、以下のケースです。

- 整骨院→整形外科紹介 またはその逆
ケガをしてまず整骨院へ行き検査を勧められ、整形外科で同じ部位を検査する場合。
同時の同部位両方は無理なので、整形外科に行くと整骨院は健康保険ではなくなります。 - 別部位 両方(同時期)
どちらも外傷(ケガ)であり、診ている部位が違えば健康保険の併用はOKです。 - 交通事故 両方(同時期)
交通事故は特殊で、自賠責や任意といった損害保険会社の財源での治療です。
健康保険ではないので同一部位の治療で併用OKです。
医師の了承と、併用期間に限りはあります。 - 同部位 整骨院が自費(同時期)
整骨院が同部位を治療してもそれが自費治療ならば、整形外科が同じ部位を治療しても整形外科が健康保険適応している事だけになります。
整形外科と整骨院の併用(はしご)は要注意!バレる理由と例外ケースも詳しく解説 – 株式会社リハサク
整骨院に通う際に知っておくべき注意点とトラブル例
整骨院の注意点は、
- 整形外科と併用のルールが分かりにくい
併用したいのに整骨院で断られる。やや複雑で患者さんには併用ルールが分かりにくいです。 - 整骨院では整形外科の病態理解が難しい
整骨院は東洋医学で、体を見る基本は異なり、多少は医師との診療に合わせていますが根本の見る視点は違います。
手術後の患者を一緒に病院で見たりするトレーニングはできないです。それゆえ画像検査結果について患者さんが話しても、困ってしまいます。
トラブル例
私は整骨院の先生と患者さんをめぐってのトラブル経験がありません。
整骨院の先生をリスペクトする、整形外科でできない時間の患者様の急な状態を診てもらえるなどの感謝を伝えているからかもしれません。
原則に従い、同部位のケガでは整形外科受診をやめてしまえば、整骨院で保険が可能と説明します。
整形外科には通いつつ同部位で整骨院に行く場合は、整骨院=自費になるのを了承していれば患者様としてもトラブルは少ないと思います。
ケガや交通事故での整形外科治療は是非ご相談ください
「痛みやしびれがもっと楽になれば、笑顔を取り戻せるのに」そんな患者さんの“悔しさ”を変えたくて診療してきました。
神経(脊髄)の専門を持つ整形外科全体の専門医として、高速道路近くの救急病院や大学病院で18年診療し、軽い障害から脊髄損傷の重い障害、交通事故の多発骨折事例も手術と外来治療で常に取り扱ってきた沼口にどうぞご相談ください。
監修

整形外科専門医Dr.沼口大輔
2006年 | 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修) |
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2008年~ | 東京女子医科大病院整形外科 入局 千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む |
2013年 | 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得 |
2016年 | 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得 |
2016年~ | 東名厚木病院 医長 脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる |
2019年 | 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得 |
2024年~ | 千葉県内 救急病院に入職 |
2025年 | 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得 |
学会発表
- 強直性脊椎骨増殖症に発生した頚椎骨折に対して、前方固定術を施行した1例 (口頭発表,一般)
- MRI矢状断像における椎間孔部での狭窄の分類 (口頭発表,一般) 2013/04/25
- 脊椎手術において2本ドレンを留置することは術後の血腫による麻痺を防ぐことができるか (口頭発表,一般) 2013/04/25
- 椎体骨折偽関節症例に対するBalloon kyphoplasty施行後の隣接椎体骨折危険因子に関する検討 (口頭発表,一般) 2013/04/25
- 肩甲上神経絞扼を認めた肩甲切痕部ガングリオンの1例 (口頭発表,一般) 2012/06/23
- 外反母趾術後に出現した足底部痛の1例 (口頭発表,一般) 2010/11/16