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交通事故をうけた場合に、むちうちとは一般的に頸部の病名の傷性頚部症候群や頸椎捻挫を表します。
むちうち腰痛という医学的な用語に関してはございませんが、「交通事故による腰痛」に関して、日本では文献的には少ないですが、経験と合わせて報告をいたします。
交通事故にて、「首だけでなく腰も痛い」と訴える方は少なくありません。国の交通事故統計では、軽いケガをされた方のうち、およそ8%の方で「腰」が主なケガの部位と報告されています*1。
一方で、一般の腰痛の調査においては腰痛のきっかけとして交通事故を挙げるのは全体の約2%程度です*2。
つまり、腰痛全体から見れば交通事故は多い原因ではありませんが、「事故をきっかけに腰痛が始まった」「事故後から腰痛が続いている」というケースは一定数存在します。
なぜ統計が少ないかについては、厚生労働省のDPCデータ(病院の保険システムで使用するデータ)では交通事故かどうか、頸部と腰部を分けた詳細な受傷原因集計まではできないことも関与します。
むちうち(外傷性頚部症候群)は世界的に統一されたWADグレードといった枠組みがしっかりしていますが、腰部の外傷はそれがはっきりしません。
それゆえ交通事故においては、「頸部に比べて腰はエビデンスが少ない」状態ではあります。
*1内閣府『令和3年版交通安全白書』
*2日本整形外科学会 腰痛に関する全国調査 2003年度
交通事故による腰痛はどんな痛み?
一般に「むちうち腰痛」と呼ばれることがあるようですが、医学的には「腰椎捻挫、腰部打撲、腰背部挫傷」といった診断名になる事が多いです。
急なブレーキや追突の衝撃で、腰の筋肉や関節・椎間板の周囲に負担がかかり、炎症や筋緊張が強くなることで腰痛が生じます。
ほとんどの腰の捻挫などは、適切な安静とリハビリで数週間〜数か月のうちに良くなります。
一方で、骨折や神経の圧迫が隠れているケースの場合には、『強い痛みで動けない』『足の力が入らない・しびれる』『排尿がうまくできない』などの症状が出る事もあります。該当する場合には画像検査を細かくしておくことも必要です。
交通事故後に現れる腰の症状
交通事故後の腰痛については多様な部位の痛みがあります。追突事故が多いこともあり、腰の真ん中や両脇(仙腸関節)、臀部に近い部位も腰痛として訴えられます。
交通事故で腰痛が起こるのはなぜ?
急なブレーキや追突の衝撃で、腰の筋肉や関節・椎間板の周囲に負担がかかり、炎症や筋緊張が強くなることで腰痛が生じます。
交通事故で腰痛がある場合の検査・治療方法
検査方法
検査に関しては、一般的な腰痛の検査と順序や選択に変わりはありません。問診、触診に加えてレントゲン検査を施行します。坐骨神経痛のような下肢のしびれや痛みを伴うもの、長い腰痛については、MRIを撮影検討することもあります。
治療方法
治療方法についても、一般的な腰痛治療と遜色はありません。
- 炎症が強い時期には、安静や消炎鎮痛剤の内服、外用(シップ)を用います。
- 硬い筋肉の部分があるときには、筋弛緩剤の内服併用も行います。
- リハビリを併用することで、痛みの軽減をしていきます。
- ブロック注射に関しては必須ではないですが、どうしても痛みが取れない場合などは検討します。
むちうちの腰痛が治るまでの期間の目安
目安は1~3か月程度ですが、事故の大小により自覚症状が長く続くこともあります。
交通事故の腰痛で注意すべき後遺症のリスク
交通事故後の腰痛では、受傷後に下肢のしびれ、痛みが出た場合などは注意が要ります。同様の発症の仕方に外傷性頚部症候群(むちうち)があります。
こちらは上肢に症状が出やすいですが、腰の場合には坐骨神経痛として下肢にしびれ痛みが出る事があります。一定の期間の治療の後に、残存する場合などは医師に伝え続け、後遺症診断に進む必要があれば行います。
後遺症診断とは
交通事故後遺症診断とは、事故によるケガが治療を続けても改善が止まった「症状固定」の時点で、いたみやしびれ、動かしにくさなどが後遺症として残ったかを医学的に判断するものです。
診断結果は後遺障害等級認定や補償内容の判断に用いられます。担当医師が等級を決める訳ではなく、特定の情報を提出して、審査されて決定が通知されます。
むちうちの腰痛に関するQ&A
交通事故で腰痛があるときに、日常生活で気を付けることは何ですか?
外傷での腰痛があるときには、筋肉が腫れて熱を持っていたり、少しの動きで腰痛が悪化しやすい時期があります。「血流が良くなりすぎると悪化する」、「腫れているところはさらなる労作で悪化する」といった特徴があります。
血流向上しすぎないように、避けるべきは以下の2つを指導します。
- 飲酒を控える
- 熱い風呂を避ける(受傷初期は)
さらなる労作は悪化について、避けるべきは以下の2つです。
- 中腰で重いものを持たない
- 仕事で重いものを担がない
以上のような腰部の負荷を減らす努力も重要です。
交通事故の腰痛は整骨院や整体に行ってもいいですか?
交通事故後の腰痛は整骨院への受診も可能です。しかし、担当医師の了承と、事故の医療費を負担している生命保険会社(自分が完全な被害者の場合には、相手の車の車両保険を担っている会社が一般的に該当します)にかけあってもらい、そこで了承を得てから受診されるとトラブルが少ないです。
交通事故後の腰痛の治療を受けても痛みが改善しない場合はどうすればいいですか?
交通事故後の腰痛の治療を受けても痛みが改善しない場合には、まずかかりつけの医師に相談ください。
検査のレベルを上げていくことを行うことが多いです。
例えば、しびれがどうしてもとれずリハビリしても筋力が戻らないといった麻痺に悩む場合には、MRIをはじめとする詳細な検査を組み合わせます。また、他の科で解決できる別の原因がないかなどを考え直し、診察を繰り返すことで原因検索をさらに行うことがあります。
一定期間が推移した場合で、症状改善がプラトー(ほとんど変わらなくなった時期)については、症状固定と判断して後遺症診断という手続きを進めていくことになります。
まとめ
むちうちと聞けば、「交通事故」を連想されるかと思います。「むちうち腰痛」という医学的な用語はございませんが、腰椎捻挫や腰背部挫傷などが該当する病名になります。私は高速道路近くの救急病院や大学病院でキャリアを積んできたので、軽微な交通事故からおぞましい事故まで沢山の方々の治療や人生に携わらせて頂きました。
多くの方は、楽しい行楽予定や仕事のスケジュールが一瞬の事故で大きく変更されて、大変な思いをした被害者の方々でした。時には重症で人生が真っ暗になってしまった方も。
初期治療の後にきちんと見続けないとさらに事故後も頸部や腰部に痛みが長く残る状態となり患者さんが苦しむので、適切なタイミングに適切な医療を行うことの重要性を感じています。
さらに交通事故による外傷の場合には、加害者がいる場合が多く心のコントロール(憎悪のコントロール:相手や現状を少しでも許せるか)も痛みに影響してしまいます。
相手と争えば弁護士さんと面談や、裁判の資料にも頻繁に関わってきましたので経験から話せる事は沢山あると思います。
すべての痛みがなくなるわけではない方もいますが、現状の辛さを共感・軽減・解決できる手段を提示していきたいと考えています。是非沼口までご相談ください。
監修
整形外科専門医Dr.沼口大輔
| 2006年 | 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修) |
|---|---|
| 2008年~ | 東京女子医科大病院整形外科 入局 千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む |
| 2013年 | 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得 |
| 2016年 | 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得 |
| 2016年~ | 東名厚木病院 医長 脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる |
| 2019年 | 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得 |
| 2024年~ | 千葉県内 救急病院に入職 |
| 2025年 | 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得 |
Incidence of Remote Cerebellar Hemorrhage in Patients with a Dural Tear during Spinal Surgery: A Retrospective Observational Analysis
Spine Surgery and Related Research 3巻 2号
発行元 Spine Surgery and Related Research
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