むちうちの治療期間の目安は?長引く原因などを整形外科医が解説

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外傷性頸部症候群(むちうち)は、画像上の問題といった他覚所見に乏しく、自覚的な症状が中心となる疾患です。
後頸部痛を主訴とし、頭痛やめまい、吐き気など多彩な症状を伴うことがあります。外からは一見普通に見えてしまうことで悩む方も多く、配慮に欠けた周りの声に傷つく方もいらっしゃります。
今回は主に治療期間について説明いたします。

むちうちの治療期間は3~6ヵ月が目安

一般的な症状の治療期間の目安は3ヵ月程度です。これは骨折や脱臼がないむちうち(外傷性頚部症候群)においては筋肉の痛みがひいていくのに相場としてこれくらいの時間を要する事が多いです。

しかし事故は組み合わせにより外力の違いがあり、加療期間も異なります。
例として、駐車場で減速状態のいわゆる“軽い接触事故”の方がうけるむちうちの外力と、ダンプカーにて高速道路で突っ込まれてのむちうちの外力は当然異なるので、同じ病名でも加療期間が長くなることもあります。

治療期間については、事故状況、検査結果、痛みやしびれの推移といったものを総合的に医師が判断して決めていきます。
一般的な見込みとして以下のように伝える事が多いです。

むちうち(外傷性頚部症候群)であれば、軽度の場合は数週間、まれに重度の場合は6ヵ月以上かかる場合もある。
目安として3か月くらいであることが多い

【症状別】むちうちの治療期間と整形外科での治療内容

整形外科ではむちうち(外傷性頚部症候群)を以下のように主に3か月までの治療過程を想定して、治療を考えています。
治療については今回は端的に述べます。 リハビリは主に電気治療などで有名な物理療法と、理学療法士さんが行う運動療法(徒手)に分けて表記します。


■ 時期による分類
  1. 急性炎症期  事故直後~受傷後1週間
  2. 亜急性線維期 受傷後1週間~3週間
  3. 回復改善期  受傷後3週間~6週間
  4. 回復再生期  受傷後6週間~3か月

①急性炎症期  事故直後~受傷後1週間

痛みが強く熱を持っていることが多いので、炎症を抑える事に加えて安静や冷却を主に行います

  • 薬物療法:痛みや炎症を抑える目的(消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、シップ)
  • 物理療法:アイシング、電気治療、頸椎カラー(安静)
  • 運動療法:痛みが強いので、軽い接触や軽度の関節可動運動

②亜急性線維期 受傷後1週間~3週間

固まり始めた関節、筋を回復させる時期です

  • 薬物療法:痛みや炎症を抑える目的(消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、シップ)、トリガーポイント注射
  • 物理療法:ホットパック、電気治療、超音波治療、頸椎カラー(痛みに応じて)
  • 運動療法:関節やその周囲組織である、関節包、靭帯の伸縮性を戻す徒手療法

③回復改善期  受傷後3週間~6週間

協調性や、姿勢の再確認をする時期です。安定化と協調性の訓練を主に行います

  • 薬物療法:痛みや炎症を抑える目的(消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、シップ)、しびれには神経障害性疼痛薬(リリカ、タリージェ等)、トリガーポイント注射
  • 物理療法:ホットパック、電気治療、超音波治療、頸椎カラー(痛みに応じて)
  • 運動療法:関節やその周囲組織である、関節包、靭帯の伸縮性を戻す徒手療法、姿勢調整

④回復再生期  受傷後6週間~3か月

再生を促す時期です。筋力訓練や社会復帰をサポートするリハビリが必要な時期です
仕事には行けるが時間がたつと痛みがでてくるなど不安定な方には、局所安静で牽引療法も適宜使用します。

  • 薬物療法:痛みや炎症を抑える目的(消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、シップ)、しびれには神経障害性疼痛薬(リリカ、タリージェ等)、トリガーポイント注射
  • 物理療法:ホットパック、牽引、電気治療、超音波治療
  • 運動療法: 筋力訓練、持久力が得られるように指導していく

ここまでを見て頂くと、医療者側は長いスパンで時期によって分けて考えているのが伝わったかと思います。
患者さんからしたら、障害を受けた最初の程度が強い弱いでどうなりそうなのか、治療のイメージが素早く欲しい方もいると思います。
それを次に述べます。

軽いむちうちの場合

受傷時に「首がわずかにおもだるい、前にうなずくと頸部が引っ張られて違和感が少しある程度」の方は、必ず当日の受診が必須ではないので、事故の手続きが大変な場合には当日は体を少し休めて、痛みが悪化するなどで必要なら後日来院しましょう。
受傷日に飲酒や熱い風呂に入る事はやめましょう。血流が良くなり痛みがひどくなることがあります。
受診しても内服やシップなどを数日使うだけで回復できる方になる事が多いです。
自然軽快していき、リハビリが必要にはならない方もいます。

中程度のむちうちの場合

一般的なむちうちで、受傷当日に痛みで受診する事が多いです。事故で車同士の場合にはかなり車の破損もあった方が多いです。
受傷直後は痛みが強くしびれも腕に一時的に起きている方もいます。内服やシップ、局所安静をとるリハビリを行ったり、適宜注射をするなどを行っていきます。
頸椎カラーも首の負担を下げてくれます。

治療経過次第ではありますが、一般的には3か月程度で回復していくことが多いです。
痛みを取るとしびれも一緒に収まる例や、長期リハビリで徐々にしびれが改善してくる場合もあります。

重度のむちうちの場合

重度なむちうちの場合には、来院時に首の痛みや腕のしびれに加えて、嘔気やめまい、痛みで座っていられない、頭痛までおきているといった自律神経症状も伴っている方がいます。
内服やリハビリ以外に、点滴治療での嘔気の改善や、疼痛の点滴も当初から行うことがあります。

治療は長くかかることもあり、検査にて骨折や脱臼以外に、症状が続く場合に脳脊髄液減少症といった問題がないかなどを調べていきます。
体に強く残ってしまった症状がある場合、後日後遺症診断にすすんで等級を評価してもらう流れになります。

むちうちの治療期間が長引く原因とは?

むちうち(外傷性頚部症候群)による体の反応について説明します。


■ むちうちに大事な二つの病態

むちうちには原因が解明されていない部分もありますが、二つの病態が関与しているといわれています。

  1. 追突時の過伸展障害による椎間関節痛
  2. 遅れて発生する持続性筋緊張

① 追突時の頸椎過伸展障害とは

自車に対しての後方からの衝突事故によるむちうちを例にすると、衝突をうけた瞬間には、頭は後方に振られ頸はまず過伸展(顎が上を向く)になります。
その後にブレーキや前方にぶつかるなどで上半身や頭は、ハンドルのある車体前方に思い切り振られます。
このときに、最初の過伸展の際に頸の骨は椎間関節という関節が衝撃をうけて滑膜炎という炎症をおこして痛みを出します。
しかしこれだけでは時間がたってからの痛みが増えてくる理由がわかりません。

② 遅れて発生する持続性筋緊張とは

報告によれば、約40%の患者さんが受傷から時間を経てから1~3日後に頸部痛が増えてくる報告があります。
これは「受傷による軽度の疼痛で起こる筋収縮により、血行不良を起こして疼痛物質の蓄積がおきて疼痛となる」と言われています。
つまり血行が絡んだ持続性筋緊張が原因と言われています。

  • むちうち機序
  • 椎間関節の衝突(〇)
  • むちうち機序
  • 椎間関節の衝突(〇)

参考:斎藤文則、いわゆる「むちうち」の臨床、ペインクリニックVol32 No.8 1147-1155(2011)


■ 通院が長引く理由として
  • 痛みが引かないこと(持続性筋緊張状態が続く)
  • リハビリが必要な方に、リハビリが行えないクリニックでの加療のみで固まってきている場合
  • 事故が大きく、当初から重症の場合(自律神経症状を伴う受傷となっている)は時間を要します。

むちうち治療の通院先|整形外科と整骨院の違い

整形外科は医療機関であり、健康保険が適用される範囲が広く、病気やケガの診断・治療(骨折、変形性関節症、リウマチなど)が可能です。
一方、整骨院(接骨院)は医療機関ではなく、医療類似行為を行う施設です。保険適用は骨折・不全骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷に限られ、原則として医師の同意が必要です。整骨院は、検査、注射、薬は処方できません。
マッサージや電気治療が主な施術で、ケガや筋肉の痛みを治療してくれます。整形外科では、検査、治療を行います。検査はレントゲン、CT、MRIなどがあります。
治療は薬処方、注射、リハビリ、手術などです。

整形外科 整骨院(接骨院)
  • 医師(国家資格保持者)が診察を行う
  • 画像検査や採血検査の施行、説明ができる
  • 薬や注射、リハビリ、手術が治療の主になる
  • 交通事故治療はじめ各種の診断書発行可能
  • 保険診療である
  • 柔道整復師(国家資格保持者)が施術を行う
  • 画像検査の施行や、検査結果説明はできない
  • 治療機械や手を使う施術が治療の主
  • 一切の診断書はかけない
  • 保険診療ではない(一部申請により保険扱い)

むちうちの治療を途中でやめるとどうなる?

むちうち(外傷性頚部症候群)の治療において「中断」は、症状の慢性化や不利になることがあります。
楽になったから医師に伝えて中断・中止する場合にはいいのですが、痛い時期に治療継続したほうがいいという判断の最中に自己判断で中断された場合には、医学的・心理的・社会的なリスクがありますのであまり勧めません。

医学的リスク

痛みの慢性化・機能低下が懸念されます。 筋肉・靱帯・神経・椎間関節などの軟部損傷が中心であり、外見的に異常が見えにくい一方で、回復は一定の時間とリハビリが必要です。
よくある例として、中断した後に筋緊張が増して「ガチガチに固くなる」「リハビリで軟らかくなったところが一気に戻ってしまう」ようなことで首の痛みや、可動域がすくなくなるといった場合があります。

心理的リスク

受傷体験がトラウマ化している人では特に気を付けたい内容です。
むちうち後に自律神経症状や、抑うつ症状まで発展していた患者さんが途中で中断してしまったときは、以下のような変化が起きる事があります。

  • 「まだ治っていないのに終わった」と感じて不安や不信感が残る
  • 社会復帰に恐怖を感じて生活の質が低下する

社会的リスク

交通事故の場合、自賠責保険や任意保険を使って治療することが多いですが、治療中断は「治癒・終了」とみなされることがあります。

  • 治療費の打ち切りの根拠となることがある(おそらく治ったのだろうと考えることも)
  • 後遺障害申請の際に中断後から先が痛かったとしても、その時期の痛みは記録がなく「因果関係がわからない」とされるリスク
  • 結果的に慰謝料算定期間が短縮されるリスク

むちうち治療の適切な通院頻度

リハビリの通院期間、頻度についてですが、私見として、頻度については最低週2回以上が好ましいと考えています。
仕事がいけないほどでしたら、一回マインドを代えて一時期に高密度で行うのもオススメです。
毎日通院した方が早く治る例は確かにありますが、事故の大小とともに症状の大小もありますので、全員が全員毎日必要ではありません。

硬さが取れてきたころには関節可動域を増やす目的でできるだけリハビリした方がいい時期はあります。おかかりの先生と話して進みましょう。

むちうちの治療中に治療費打ち切りを告げられたら

治療費打ち切りを告げられた場合には、まず保険会社に連絡して理由を良く聞きましょう。
理由がありますので、その理由をもって納得ができない場合には担当医師と話して妥当か検討してもらいましょう。

まとめ

むちうち(外傷性頚部症候群)と聞けば、「交通事故」を連想されるかと思います。
高速道路近くの救急病院や大学病院でキャリアを積んできたので、軽微な交通事故からおぞましい事故まで沢山の方々の治療や人生に携わらせて頂きました。

多くの方は、楽しい行楽予定や仕事のスケジュールが一瞬の事故で大きく変更されて、大変な思いをした被害者の方々でした。
時には重症で人生が真っ暗になってしまった方も。初期治療の後にきちんと見続けないとさらに事故後も頸部に痛みが長く残る状態となり患者さんが苦しむことは多く、適切なタイミングに適切な医療を行うことの重要性を感じています。

さらに交通事故によるむちうちの場合には、加害者がいる場合が多く心のコントロール(憎悪のコントロール:相手や現状を少しでも許せるか)も痛みに影響してしまいます。
相手と争えば弁護士さんと面談や、裁判の資料にも頻繁に関わってきましたので経験から話せる事は沢山あると思います。

すべての痛みがなくなるわけではない方もいますが、現状の辛さを共感・軽減・解決できる手段を提示していきたいと考えています。是非沼口までご相談ください。

監修

整形外科専門医 Dr.沼口大輔

整形外科専門医Dr.沼口大輔

大学 2006年 東邦大学医学部卒 2025年 早稲田大学 大学院経営管理研究科(MBA)修了
資格、学位 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医 MBA(経営学修士)
職歴
2006年 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修)
2008年~ 東京女子医科大病院整形外科 入局
千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む
2013年 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得
2016年 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得
2016年~ 東名厚木病院 医長
脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる
2019年 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得
2024年~ 千葉県内 救急病院に入職
2025年 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得
執筆・共著

Incidence of Remote Cerebellar Hemorrhage in Patients with a Dural Tear during Spinal Surgery: A Retrospective Observational Analysis

Spine Surgery and Related Research 3巻 2号
発行元 Spine Surgery and Related Research

65歳以下単椎体骨折症例にて2週間のベッド・アップ30°制限とした場合の,単純X線変化について

日本整形外科学会雑誌
(日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会抄録集)
94巻 3号

脊椎手術における術後頭蓋内出血についての検討

Journal of Spine Research 8巻 3号
発行元 日本脊椎脊髄病学会

上腕骨近位端骨折に対し腓骨骨幹部移植を行った2症例

JOSKAS 44巻 4号
発行元 日本膝関節学会

人工股関節全置換術を要した遅発性脊椎骨端異形成症の1例

関東整形災害外科学会雑誌 43巻 1号
発行元 関東整形災害外科学会