骨粗鬆症(骨粗しょう症)とは?原因・症状・予防などを医師が解説

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骨粗鬆症(骨粗しょう症)とは

骨粗鬆症とは、骨強度の低下が特徴であり、骨折リスクが増大しやすくなる骨格の病気の事です。
骨強度≠骨密度ではないことが重要です。骨密度とは骨強度の70%と表されます。残りは骨の質(骨質)というものが骨強度に関与します。

骨強度=骨密度+骨質

骨粗鬆症は骨密度が少なく、骨質が劣化する事で骨折が起きやすい状態とも言えます。

骨粗鬆症の原因

原因は、かなり複雑なので、理解を一気にするのは難しいです。
そこで骨密度について大きく以下の3つのカテゴリーに分類して私は理解しています。また、別に骨質悪化がありますので、4つ目の原因として提示します。

①骨形成(骨密度を高める働き)の障害

骨は、骨吸収(破骨細胞)と骨形成(骨芽細胞)のバランスによって構造を保っていますが、骨芽細胞による骨形成が低下することで骨密度が減少するケースが該当します。

  • 加齢により骨芽細胞の活性が低下し、新たな骨形成が減少します。
  • ステロイド薬の長期使用では、骨芽細胞が抑制され、骨形成が著しく低下します。
    使用開始3か月以内に骨密度が急速に低下することが知られています。また、この薬は骨質にも影響があります。

②骨吸収(骨密度を下げる働き)の亢進

破骨細胞による骨吸収が相対的に強くなることで、骨密度の減少が加速する状態です。

  • エストロゲン(女性ホルモン)の低下:
    閉経後の急激なエストロゲン減少により、破骨細胞の抑制が失われ骨吸収が促進されます。
  • 副甲状腺ホルモン(PTH)過剰:
    骨からカルシウムを動員するために骨吸収が過剰になります。
  • 甲状腺機能亢進症や慢性炎症性疾患(リウマチなど)でも骨吸収は増加します。

③骨の材料供給不足による骨密度低下(吸収障害型)

骨を構成するのに必要なカルシウムやビタミンDなどの栄養素の吸収障害や代謝異常が原因で、骨密度が低下することがあります。

  • 胃切除・小腸疾患・吸収不良症候群では、カルシウムやビタミンDの吸収が低下します。骨を作る素材の合成が妨げられてしまいます。
  • 慢性膵炎や胆道疾患では脂溶性ビタミン(Dなど)の吸収が妨げられます。
  • 慢性腎疾患では活性型ビタミンDの産生が障害され、カルシウムの吸収も低下し、二次性副甲状腺機能亢進症を併発しやすくなります。

④骨質異常

骨密度の低下だけでなく、骨の質そのもの(コラーゲン架橋や微細構造)の異常も骨折リスクに寄与します。これらは骨密度が良くとも骨折リスクが高いので注意が要ります。

  • 糖尿病では骨コラーゲンに終末糖化産物(AGEs)が蓄積して劣化します。2型糖尿病(一般的な糖尿病)では椎体骨折リスクが男性4.7倍、女性1.9倍でした。*
  • 慢性的な炎症疾患では関節リウマチ慢性閉塞性肺疾患(タバコでおきやすいもの)が代表的ですが、慢性的な炎症により骨形成とともに骨質悪化が起きます。タバコを吸っている方が骨が弱くなるメカニズムがあります。
  • アルコール多飲・依存は骨芽細胞機能低下・栄養吸収不良・ホルモン異常の複合因子として働きます。悪い素材で骨を作る表現に近く、良質な骨は望めないです。
  • 抗ガン剤:一部の抗がん剤では骨質の低下を起こします。

*杉本利嗣ほか:糖尿病における骨折の疫学と骨質低下の機序.日本内科学会雑誌 (2013)102巻4号:907-912.

骨粗鬆症になりやすい人の特徴

骨粗鬆症になりやすい人は「骨粗鬆症の原因」で挙げた原因を多く持つ方が該当します。
具体的には、以下の方が該当します。

  • 喫煙者
  • 多量の飲酒をする
  • 低体重
  • 高齢者
  • 閉経後(閉経年齢が早い、両側の卵巣を摘出している場合も)
  • ステロイド内服中
  • カルシウム不足(胃切除などの吸収障害の方も含む)
  • 糖尿病

骨粗鬆症の患者数

我が国における骨粗鬆症の患者数は1590(男性410、女性1180)万人と推定されており、総人口の13%に相当します。女性において年齢別では、60歳代では5人に1人が、80歳代では2人に1人が該当します。

骨粗鬆症の症状

骨粗鬆症自体に症状はありません。骨折しやすい状況となったうえで、軽微な外傷や、転倒を契機に骨折してしまいます。余命に影響して特に重要なのは、腰椎や胸椎圧迫骨折と大腿骨近位部骨折です。

椎体骨折を発症すると、腰痛の強さは幅がありますが、ひどい場合は寝たきりに一時期なってしまいます。また骨折の程度次第では神経障害がおきてしまい、下肢の痛みやしびれ、筋力低下を起こすことがあります。

また、変形が遺残すると、背中が丸くなり、その結果心肺機能の低下や逆流性食道炎という内科的な病気を引き起こします。
一方で大腿骨近位部骨折とは、転倒に伴い股関節部での骨折が起こり、歩行困難となります。手術を必要とする場合が多いです。
65歳以上の方がこの骨折を起こした場合、1年以内の死亡率は10~30%というデータもあります*。

*日本整形外科学科・日本骨折治癒学会「大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン(改定第3版)」(2021)

骨粗鬆症の診断・検査方法

骨粗鬆症の検査としては、“骨密度検査”、採血で調べる“骨代謝マーカー”というものが一般的です。

骨密度検査
若い成人の平均値をもとに現在の骨密度が何%にあたるかを見るYAM値というものが重要で、診断と薬剤開始決定にかかわります。広く診療に使用されているDEXA法では腰椎と大腿骨頸部といって2か所の骨密度測定を致します。
YAM値は70%未満を骨粗鬆症といい、治療を行います。70%-80%は通常は治療はおこないません。しかし脆弱性骨折(骨粗鬆症によっておこりやすい部位の骨折)がある場合には治療を開始します。80%以上については骨粗鬆症ではなく、治療は不要です。

骨代謝マーカーは採血検査にて、各種の骨代謝マーカーという各種マーカーを測定します。
この目的は、骨粗鬆症の病態を把握する事、適切な薬剤選択に利用する、治療のモニタリング(きちんと骨粗鬆症治療がすすんでいるか)を確認する、内服を継続すべきか休薬すべきかを判断できる為に使用します。

骨粗鬆症の治療と予防

骨粗鬆症治療薬

細かな作用機序などは煩雑なところがありここでは少々省いたり、簡易的に表現します。

一般名(成分名) 主な商品名(1〜7に対応) 主な効能分類
アレンドロン酸 フォサマック、ボナロン 骨吸収抑制
リセドロン酸 アクトネル、ベネット 骨吸収抑制
ミノドロン酸 ボノテオ、リカルボン 骨吸収抑制
ラロキシフェン エビスタ 骨吸収抑制+骨質改善
バゼドキシフェン ビビアント 骨吸収抑制+骨質改善
テリパラチド フォルテオ(毎日)、テリボン(週1回)など 骨形成促進
デノスマブ プラリア、ランマーク 破骨細胞形成・機能抑制
ロモソズマブ イベニティ 骨形成促進+骨吸収抑制
アバロパラチド オスタバロ 骨形成促進
アルファカルシドール アルファロール 骨代謝調整(補助療法)
カルシトリオール ロカルトロール 骨代謝調整(補助療法)
エルデカルシトリオール エディロール 骨代謝調整(補助療法)
  1. ビスホスホネート
    最も広く使われている骨粗鬆症治療薬で、骨密度を高め骨折を抑制します。アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸などがあり、経口薬と注射薬が存在します。
    服用頻度は毎日〜年1回まで幅広く選択可能です。短期的には食道炎、長期的には非定型大腿骨骨折に注意が必要です。
  2. SERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)
    ラロキシフェンとバゼドキシフェンがあり、下がってきた女性ホルモンを補充する理解に近いです。 骨吸収抑制と骨質改善作用を持ちます。
    閉経後女性で使いやすく、副作用が少ないため長期投与向きです。活性型ビタミンD製剤との併用が有効です。
  3. テリパラチド
    副甲状腺ホルモン製剤で、骨形成を促進。連日投与と週1回投与の製剤があり、使用期間は2年が目安です。その後の治療薬への切り替えが必要です。
  4. デノスマブ
    破骨細胞の働きを抑える注射薬。6ヶ月ごとに皮下注射し、骨密度増加が得られます。
    低カルシウム血症を防ぐため、ビタミンDとカルシウムの併用が必要です。
  5. ロモソズマブ
    骨形成と骨吸収抑制の両方の作用をもち、月1回の皮下注射で急速な骨密度増加が期待されます。安全性は高いですが、心血管疾患の既往には注意が必要です。
  6. アバロパラチド
    強力な骨形成促進剤で、毎日の皮下注射により骨代謝を活性化します。比較的新しい薬剤です。
  7. 活性型ビタミンD₃製剤
    アルファカルシドール、カルシトリオール、エルデカルシトリオールがあり、主に他剤との併用で効果を発揮します。
    高齢者では高カルシウム血症に注意し、定期的な採血が必要です。

予防

骨粗鬆症にならないようにするには、3つが重要です。

  1. 食事
  2. 運動
  3. 日光に当たる

①骨粗鬆症におすすめの食べ物と食べてはいけないもの

予防①は「バランスのよい食事」です。特に、カルシウム(牛乳・小魚・大豆製品)とビタミンD(鮭・イワシなどの魚介類、卵、きのこ類)は日本人が不足ぎみで、骨折リスクを下げる効果が示されています。ビタミンK(納豆・緑黄色野菜)は骨形成に必須です。
たんぱく質も骨基質の主成分として重要であり、高齢者でも積極的な摂取が必要です。単一栄養素ではなく多様な栄養素を「食事から」摂ることが重要です。

【具体例】

ある前提をもとに提言できる食事の例を提案します。目安にしていただきたいです。
それは、「ビタミンD(400~800 IU/day)とカルシウム(1,000~1,200 mg/day)の併用により、全骨折リスクは6%減少、大腿骨頸部骨折リスクは16%減少する」*です。
手術となる大腿骨頸部骨折が16%減少するという、食事のインパクトは大きいです。

実際には多量摂取も大変ですので、一般的にはカルシウムの摂取目標値は800mg/dayと言われています。しかし20歳以上の女性での実際の摂取量は498mg/dayとなっています。
意識的に摂取する必要があります。

*Yao P ほか. ビタミンDとカルシウムの骨折予防効果に関するメタアナリシス. JAMA Netw Open. 2019;2:e1917789.

ビタミンD(400~800IU/day)って何に含まれる?

食材例 含有量(ビタミンD㎍) 備考
鮭(焼き)80g 約25㎍(=1,000IU) 一切れで目標達成可能
いわし(丸干し)50g 約15㎍(=600IU) 2~3尾
卵(1個) 約1~2㎍(=40~80IU) 副的な補助として有効
まいたけ(100g) 約4~6㎍(=160~240IU) ビタミンD含有量が多いきのこ類の一つ

カルシウム(1000-1200mg/day)って何に含まれる?

食材例 含有量(カルシウム mg) 備考
牛乳(200mL) 約220mg 1杯で1/5程度
ヨーグルト(100g) 約120mg 1パックで1/8~1/10程度
小松菜(茹で)1束(70g) 約120mg 野菜の中では優秀
煮干し(10g) 約220mg 少量で高カルシウム
木綿豆腐(150g) 約180mg 豆類も有効

どのような食材で達成するの?

  • 焼き鮭1切れ(80g)=ビタミンD25㎍、カルシウム10mg程度
  • 牛乳1杯(200mL)=カルシウム220mg
  • 木綿豆腐1/2丁(150g)=カルシウム180mg
  • 小松菜のおひたし1皿=カルシウム120mg
  • ヨーグルト1パック(100g)=カルシウム120mg

→ カルシウム合計:約650〜700mg
→ ビタミンD:約25μg(1,000 IU)

これに煮干し(10gあたりカルシウム220mg)やチーズ(100g当たりカルシウム500mg程度)などを加えると1,000mg超も十分可能です。

食材が理解できたところでレシピについては、公益財団法人骨粗鬆症財団を参照もオススメします。

公益財団法人 骨粗鬆症財団レシピ

一方避けたほうがいいものは、加工食品やインスタント食品に多く含まれるリン酸塩、塩分過多です。これらはカルシウムの吸収を阻害し、骨密度の低下を招きます。またアルコールは、「1日15g以上で骨折リスクが上昇」してしまいます。

「1日15g以上で骨折リスクが上昇」とは

アルコールをg換算していないと思いますので解説します。ビールは一般的に5%のアルコール濃度です。
ビール350mL缶1本:アルコール量 約14gとなり1缶でほぼ15gに相当します。つまり、毎日1缶以上のビールを飲むと骨折リスクが上がる可能性があります。

缶チューハイは7%のものもあります。 缶チューハイ350mL(7%)ではアルコール量 約19.6gとなり、1缶で15gを超えるため、毎日1缶でもリスクに相当します。

②運動について

予防の②は運動です。運動は、骨にカルシウムが蓄積されると言われています。1日の目安は女性6,000歩、男性7,000歩です。

③日光に当たる事について

紫外線によって体内のビタミンDが活性化し、結果的にカルシウムの吸収が高まっていきます。
1日15-30分程度日に当たるを勧めます。難しい状況ならば、手のひらなどを光に当てるだけでもいいです。*

*折茂肇、骨の健康考えていますか?公益財団法人 骨粗鬆症財団

まとめ

骨粗鬆症は、大学病院では専門の医師が診療しており、私たち脊椎外科医も特に深い知識と強い関心をもって治療にあたっています。
これは、骨粗鬆症が原因で起こる圧迫骨折による神経障害の手術を多く担当し、また背骨の手術において良好な結果を得るために骨粗鬆症管理が非常に重要だからです。

治療の効果が数値で分かりやすく現れるため、患者さまにも改善を実感していただきやすい領域です。骨を健康に保ちたいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

監修

整形外科専門医 Dr.沼口大輔

整形外科専門医Dr.沼口大輔

大学 2006年 東邦大学医学部卒 2025年 早稲田大学 大学院経営管理研究科(MBA)修了
資格、学位 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医 MBA(経営学修士)
職歴
2006年 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修)
2008年~ 東京女子医科大病院整形外科 入局
千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む
2013年 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得
2016年 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得
2016年~ 東名厚木病院 医長
脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる
2019年 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得
2024年~ 千葉県内 救急病院に入職
2025年 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得
学術活動

原著論文1

Incidence of Remote Cerebellar Hemorrhage in Patients with a Dural Tear during Spinal Surgery: A Retrospective Observational Analysis. 2019/04

症例報告

C5/6 hyperflexion sprainの1例 2018/06

原著論文2

環軸関節亜脱臼の診断におけるトモシンセシス撮影の有効性 2017/08

原著論文3

人工股関節全置換術を要した遅発性脊椎骨端異形成症の1例 2012

学会発表

  1. 強直性脊椎骨増殖症に発生した頚椎骨折に対して、前方固定術を施行した1例 (口頭発表,一般)
  2. MRI矢状断像における椎間孔部での狭窄の分類 (口頭発表,一般) 2013/04/25
  3. 脊椎手術において2本ドレンを留置することは術後の血腫による麻痺を防ぐことができるか (口頭発表,一般) 2013/04/25
  4. 椎体骨折偽関節症例に対するBalloon kyphoplasty施行後の隣接椎体骨折危険因子に関する検討 (口頭発表,一般) 2013/04/25
  5. 肩甲上神経絞扼を認めた肩甲切痕部ガングリオンの1例 (口頭発表,一般) 2012/06/23
  6. 外反母趾術後に出現した足底部痛の1例 (口頭発表,一般) 2010/11/16