むちうちで後遺症は残るのか?症状や治療方法を整形外科医が解説

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外傷性頸部症候群(むちうち)は、画像上の問題といった他覚所見に乏しく、自覚的な症状が中心となる疾患です。後遺症が残りやすいと周知されており、どんなものを後遺症というのか知りたい方も多いと思います。
確認していきましょう。

むちうちで後遺症が残ることはある?

大前提として、事故にあったら全員が後遺症になるわけではないので心配しすぎないでください。
「むちうち」は自動車事故時に頸部が鞭のようにしなる動きによって受傷することが良く知られています。

むちうちに大事な二つの病態

むちうちには原因が解明されていない部分もありますが、主に二つの病態が関与しているといわれています。ひとつは追突時の過伸展障害による椎間関節痛であり、もう一つは、遅れて発生する持続性筋緊張です。

時間がたっても治りにくいのは持続性筋緊張であり、受傷後1-3日後に首の痛みが出現し、内服薬やリハビリといった治療を選択します。それでもなかなか改善しない場合に限り痛みが遷延してしまう(後遺症になっていく)方がいます。
後遺症は受傷直後ではなく、後遺症認定というタイミングで認めてもらえるかが決定されます。

むちうちの治療期間の目安は?長引く原因などを整形外科医が解説
 

むちうちの後遺症にはどんな症状がある?

むちうちでは、頸部痛・頭痛・めまい・吐き気など、症状の現れ方に幅があります。
中には、一般的に知られている自律神経の不調(動悸、めまい、倦怠感、嘔気など)を感じる方もいます。
自覚症状の頻度としては多い順に、

  • 頸部痛:94%
  • 肩こり:63%
  • 頭痛:47%

と報告されています。これらに加えて、自律神経症状が、少数ながら合併することもあります。
後遺症として問題になるのは、こうした症状のいずれかが治療を続けても改善せず、長期間にわたり持続する場合です。その際には、症状の内容や経過を医師に伝えていくことが重要になります。
最終的に後遺症認定へ進むかどうかは、症状の程度や推移を踏まえて、医師が判断します。

参考文献:
齊藤 文則.いわゆる「むちうち」の臨床-整形外科医の視点から:診察から治療まで-.ペインクリニック.2011;32(8):1147-1155

むちうちで後遺症が残りやすいケース

後遺症がのこりやすいケースというのは、救急車で救急外傷患者を受け続けた医師からすれば多少の経験からくる傾向を掴めていますが、明らかなデータがないので「後遺症が残りやすいむちうちの場合」についてははっきりしたことは言えません。

むちうちの後遺症はいつまで残る?

症状は時間経過とともに改善傾向とはなりますが、身体に起きる痛みの持続は個人差があります。後遺症診断(自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書)を作成して一区切りとなります。
その後に病院に来院を続ける患者様は少なく、何年で症状が軽快しているのかを確認するのは難しいです。それゆえ「個人差がある」という回答になります。

むちうちの後遺症の診断・検査方法

むちうちに特化した検査というのは特にございません。
問診で事故状況を把握した後に、身体診察所見とレントゲンやMRIといった検査機器で診断を判定します。エコーを適宜検査に組み入れて行います。

むちうちの後遺症が残ったらどうすればいい?

むちうちの症状がとれず治療が奏功もしない。保険会社からも補償できる期間がそろそろと言われ、現状で納得できない場合には、後遺症診断にすすむことについて医師に相談されるといいでしょう。
これは正式には自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書と言います。

手順

① 症状固定を行う
症状固定とは、症状改善の変化が殆どなくなった状態の時です。注意点は、症状がゼロ(交通外傷をうける前と同じ状態)になった時という意味ではありません。
治療しても事故の前の状態との間にギャップがある状態でも行えます。推移と程度を見ながら医師と決めていきます。(あくまでも目安ですが、外傷性頚部症候群又は頸椎捻挫なら通常3か月~6か月程度)

② 後遺症診断の書類を取り寄せる
相手がいる事故の場合で被害者の場合には、「加害者の任意保険会社」に連絡して書類を医療機関に送付してもらいます。

③ 後遺症診断用の診察や計測をうける
①の症状固定時に後遺症診断に進む事が間違いない場合には、診察時に「どこの症状がどれくらい残っているか」、「その障害により日常生活はどの程度障害されているのか」、「薬剤でどれほど改善するのか」などを聴取します。後遺症診断のための記録・測定は医師の診察やPTが行います。

【整形外科で記載することが多い項目とは何があるか】

  • 自覚症状
    ご本人の主張内容になります。
  • 他覚症状
    医師が診察により神経所見の確認やしびれの位置把握をします。
  • 醜状障害
    体表面に傷跡が大きく残った場合や、欠損などがあるかどうかをみます。
  • 関節機能障害
    障害に関与する関節部位の関節可動域を測定します。

④ 書類を提出後は判定を待つ
8割以上は2か月以内に判定が出る事が多いですが、複雑な場合は半年程度かかるとも聞いたことがあります。

むちうちの後遺症リスクを最小限に抑えるポイント

「これをすれば最小限にできる」というやり方はございませんが、後遺症とは痛みが残る状態であるため、治療中から痛みが続いていることに対して検査や治療を積極的に取り組んでくれない医師の場合にはリスクになると思います。

また、痛みやしびれが続く中で自院の検査機能が不足していても、他の病院や医師に相談し、そちらで検査・治療できるように紹介もしない医師の場合では、時間が過ぎてしまい、後遺症に近づくといえるでしょう。
交通外傷は、治療期間の相場が決まっているために、時間に追われます。積極的に医療資源を投下してくれる医師に出会う事が大事だと思います。

整形外科で行うむちうちの治療方法

後遺症にならないようにむちうち(外傷性頚部症候群)に対して行う治療には、薬の処方、患部への注射、リハビリ、手術などです。主に医療機関で重要なのはリハビリの機能です。
リハビリについては以下のリンクをご参照ください。

むちうちのリハビリとは?

整骨院ではなく整形外科に行くべき理由

整形外科に行くべき理由は、

  • 最終的に交通事故は治療中も記録・証拠がとても大事
  • 定期的に記録(カルテ)を付け続けるには医師の診察が必要
  • 定期的に画像検査をするには医療機関が必要
  • 後遺症診断といった書類を書く権限は医師のみ

以上の事から整骨院では書類を作る権限がなく、整形外科の医療機関に通いましょう。
記録が長期に抜けている場合には、患者様が係争で不利になってしまうこともあります。

以下に、整形外科と整骨院の差を表にしました。

整形外科 整骨院(接骨院)
  • 医師(国家資格保持者)が診察を行う
  • 画像検査や採血検査の施行、説明ができる
  • 薬や注射、リハビリ、手術が治療の主になる
  • 交通事故治療はじめ各種の診断書発行可能
  • 保険診療である
  • 柔道整復師(国家資格保持者)が施術を行う
  • 画像検査の施行や、検査結果説明はできない
  • 治療機械や手を使う施術が治療の主
  • 一切の診断書はかけない
  • 保険診療ではない(一部申請により保険扱い)

まとめ

むちうち(外傷性頚部症候群)と聞けば、「交通事故」を連想されるかと思います。高速道路近くの救急病院や大学病院でキャリアを積んできたので、軽微な交通事故からおぞましい事故まで沢山の方々の治療や人生に携わらせて頂きました。
多くの方は、楽しい行楽予定や仕事のスケジュールが一瞬の事故で大きく変更されて、大変な思いをした被害者の方々でした。

時には重症で人生が真っ暗になってしまった方も。初期治療の後にきちんと見続けないとさらに事故後も頸部に痛みが長く残る状態となり患者さんが苦しむことは多く、適切なタイミングに適切な医療を行うことの重要性を感じています。

さらに交通事故によるむちうちの場合には、加害者がいる場合が多く心のコントロール(憎悪のコントロール:相手や現状を少しでも許せるか)も痛みに影響してしまいます。
ひとたび相手と争えば弁護士さんと面談や、裁判の資料にも頻繁に関わってきましたので経験から話せる事は沢山あると思います。

すべての痛みがなくなるわけではない方もいますが、現状の辛さを共感・軽減・解決できる手段を提示していきたいと考えています。是非沼口までご相談ください。

監修

整形外科専門医 Dr.沼口大輔

整形外科専門医Dr.沼口大輔

大学 2006年 東邦大学医学部卒 2025年 早稲田大学 大学院経営管理研究科(MBA)修了
資格、学位 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医 MBA(経営学修士)
職歴
2006年 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修)
2008年~ 東京女子医科大病院整形外科 入局
千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む
2013年 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得
2016年 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得
2016年~ 東名厚木病院 医長
脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる
2019年 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得
2024年~ 千葉県内 救急病院に入職
2025年 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得
執筆・共著

Incidence of Remote Cerebellar Hemorrhage in Patients with a Dural Tear during Spinal Surgery: A Retrospective Observational Analysis

Spine Surgery and Related Research 3巻 2号
発行元 Spine Surgery and Related Research

65歳以下単椎体骨折症例にて2週間のベッド・アップ30°制限とした場合の,単純X線変化について

日本整形外科学会雑誌
(日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会抄録集)
94巻 3号

脊椎手術における術後頭蓋内出血についての検討

Journal of Spine Research 8巻 3号
発行元 日本脊椎脊髄病学会

上腕骨近位端骨折に対し腓骨骨幹部移植を行った2症例

JOSKAS 44巻 4号
発行元 日本膝関節学会

人工股関節全置換術を要した遅発性脊椎骨端異形成症の1例

関東整形災害外科学会雑誌 43巻 1号
発行元 関東整形災害外科学会