外反母趾の原因とは?遺伝や靴による影響を整形外科医が解説

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外反母趾とは母趾の先が付け根から示指側に曲がってしまう障害で、母趾球の内側が突出していく変形の事です(母趾の外反といいます)。
母趾の外反変化だけではなく高度の変形となれば足の機能に問題が起こる事があります。

高齢者で重度の外反母趾の場合には示趾にぶつかり、潜りこんでしまうことで感染症や皮膚の潰瘍を作ってしまう事もあり、外反母趾を悪化させないように管理する事は、歩行能力維持や嫌な痛みに悩まされないようにするためにも重要です。

外反母趾の原因とは?

外反母趾の原因としては内的要因というものと外的要因というものがあります。

内的要因 外的要因
  • 遺伝
  • 性差(女性に多い)
  • 高齢
  • 扁平足
  • 開帳足
  • 母趾>示趾で趾が長い事
  • 脳疾患の既往があること(脳性麻痺、脳卒中)
  • 足のアーチへの負担が強い靴
  • バレエシューズやハイヒール

外反母趾の先天的原因

日本において、女子大生を対象にした調査では外反母趾のある人は47.7%に家族歴がありました。家族歴がある場合は、6割の確率で母親からの遺伝が関与していると言われています。
しかし一方で、韓国の報告では異なる結果もあり、今のところ“遺伝については、一定の見解はまだ得られていない”と言えます

外反母趾になりやすい足の形

外反母趾になりやすい足の形

足の形には3種類あります。

  • 母趾が長いエジプト型(60-70%の方)
  • 示趾が長いギリシャ型
  • どの趾も同じくらいのスクエア型

それぞれの足型には選べる靴にも差が出てきます。

アシックススポーツ工業研究所によれば、スクエアタイプは足の甲がハイアーチであり、内側縦アーチがしっかりしています。
先が細い靴やヒールに足が入れにくく、結果的に外反母趾になりにくい傾向を指摘しています。

また、逆にギリシャ型は形状的に先がとがったハイヒールに入りやすく、エジプト型と同様に内側アーチが悪くなると外反母趾となるリスクがあります。
私も診療において同様に実感しており考えを支持しています。また、ガイドラインにおいても、母趾が長い事が外反母趾になりやすいと言われています

*外反母趾ガイドライン2022改訂第3版 日本整形外科学会・日本足の外科学会

扁平足・開帳足

扁平足_開帳足 扁平足_開帳足

外反母趾の方は開張足、扁平足を合併することが言われております。
これはどちらが発端で、どちらが結果なのかについて共通の一致見解はまだありません。

扁平足

  • 病態:後脛骨筋機能不全という筋力低下に関与します。
  • 原因:足の内側縦アーチを作っている筋肉が年齢や炎症で腫れたり、断裂することで機能不全

これが合併すると徐々に母趾側の荷重負担が強くなって外反母趾が悪化することがあります。

開帳足、胼胝

外反母趾が高度になると母趾の機能が落ちていき、母趾への荷重は2-3趾に移動していくため、足裏とくに2-3趾の下に胼胝(タコ)ができます。痛みを伴う場合は歩行に影響もしていきます。さらに中央横アーチが負担により平坦化していくと、開帳足変形はさらに進み足のトラブルも増えていきます。

歩き方が悪いから扁平足になるわけではなく、それぞれの障害が関与していきます。

扁平足とは?

関節が柔らかい

関節がやわらかい事は、外反母趾になるかというと、それははっきりしません。

外反母趾の後天的原因

後天的な(生まれつきではない)理由としては、

  1. 靴による影響
  2. 病気による影響

が挙げられます。

①靴による影響

ハイヒールの影響があります。toe box(指先)が狭いところで圧迫をされて、ヒールが高いと、外反母趾になるリスクが増してしまいます
ヒールについては履く年齢の時期と、靴の選択の仕方では後々まで悪化する可能性があります。

20歳から39歳までの間に、先がとがったつま先の狭い靴を履くことが後年の外反母趾に影響があることが分かりました*1
また別の報告ではヒールについても、6センチ以上のものでは足の前に外力がかかり、開帳足を経由して外反母趾になるリスクもあります*2。ヒールは米国足医学会でも4センチまでを推奨しています。ヒールも細いより太く、パンプスならストラップ付きがいいと診療では伝えています。

*1.2外反母趾ガイドライン2022

②病気による影響

これは脳疾患によるものです。脳卒中(脳梗塞や脳出血)を起こすと、体の筋肉は固くなり骨格も変化を受けていきます。

履物やストッキングで外反母趾になるのか?

後天的な外反母趾に重要なのは複合要素です。①なりやすい足形がある ②靴の選定 ③ハイヒールを継続使用するタイミングが影響する と説明しました。特に以下の注意点を再度書きます。

  • 親指が長い足のタイプ
  • つま先が細い靴
  • ヒール6センチ以上
  • 20-39歳の間に継続的な使用

以上が沢山当てはまる方は要注意です。しかし一方で、ストッキングが原因になるという根拠は今のところありません。

運動不足や肥満で外反母趾になる?

姿勢や運動不足で、外反母趾になる事ははっきりしません。

【ケース別】外反母趾になる原因

片足だけ、高齢者、子どもについての外反母趾について疑問が多いと思いますので解説します。

片足だけが外反母趾になる原因

片足だけが外反母趾になることはあります。本来足は、左右対称に障害が来るものではありません。足の裏に胼胝(タコ)がある方は自分の逆の足を見て頂き、次に周りの人の靴裏の削れ方も見てください。左右対称ではないのはわかると思います。

外反母趾も同様で、片足だけが負担が強くなり発症することはあります。私見ですが、ヒトは脚の長さが左右違う事、外反母趾は変形性膝関節症に代表されるO脚との関与が言われていますので、本来足への負担は左右非対称であり片側の障害が発生すると考えています。

高齢者が外反母趾になる原因

高齢者が外反母趾になるのは、扁平足や開帳足が悪化し一緒に外反母趾が悪化することが多いと考えられています。後脛骨筋という筋肉の機能不全が扁平足の原因とも言われています。
また、施設などの高齢者では脳疾患を発症した後に経時的に足の変形が進行して外反母趾が悪化することがあります。

子供が外反母趾になる原因

小学校6年生から男女ともに外反拇趾がみられ、中学校3年生では全体で29%にみられます*ので、大人だけの障害ではありません。遺伝の要素は言われていますが、そのほかの環境因子として子どもの頃に緩めの靴を履くことも足のトラブルの原因となるので注意がいります。

*日本整形外科診療ガイドライン委員会(2022)

外反母趾はクリニックや病院で治療を受けるべき?

外反母趾は、沢山の治療と称するものが巷やネットにあふれています。しかし、外反母趾の重症度は変わっていき、それはレントゲンや診察で評価していきますので定期的な相談を行う必要があります。悪化進行を遅らせたり、手術といった提案も適切なタイミングで行っていきます。

また足に詳しい装具技師さんが作るアーチサポートは、とても秀逸です。これは、保険医療機関(クリニック、病院)にかからないとできませんので、“きちんとした治療を保険医療で”スタートしていってほしいと思います。
小児のインソールや、大人のインソールもきちんと保険病名がつく障害があるようなら保険対象となります。最終的に子供は全額負担なし、大人では約1万5000円程度(3割)の負担額になります。

外反母趾くらいでクリニックにかかったらいけないと考えている方が稀にいますが、高度な障害になる前に、軌道修正できたほうがいいです。
放置するとひどい痛みで悩まされることもありますので、是非気軽にご相談ください。

まとめ

外反母趾をはじめとする足の変形は、見た目の問題だけでなく、歩く機能にも影響します。靴が合わなくなり、足の痛みから「横幅が広くてゆるい靴しか履けない」という状態になる方も少なくありません。

その結果、歩くこと自体がおっくうになり、膝や股関節の変形性関節症との関連や、ロコモティブシンドローム(運動機能の低下)との関係が指摘されています。
足の変形は大人だけの問題ではなく、成長期のお子さまにも起こります。

将来まで健康に足を使い続けるためには、早い段階からインソール(足底板)や母趾の運動などを取り入れ、靴の選定を含めた正しい知識を伝えていくことが大切です。そのためには、医師・リハビリスタッフ・装具技師が連携した医療チームが重要だと考えています。

私はこれまで、大学病院にて外反母趾手術や、足に特化したクリニックやこども病院で、先天性内反足やうちわ歩行、インソール作成など、お子さまの足の変形治療にも携わってきました。成人の外反母趾はもちろん、お子さまの外反母趾や扁平足についても、看護師、リハビリスタッフや装具技師と一緒に治療を進めていきます。

「これくらいで相談していいのかな」と思う段階でも構いませんので、どうぞお気軽に沼口までご相談ください。

監修

整形外科専門医 Dr.沼口大輔

整形外科専門医Dr.沼口大輔

大学 2006年 東邦大学医学部卒 2025年 早稲田大学 大学院経営管理研究科(MBA)修了
資格、学位 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医 MBA(経営学修士)
職歴
2006年 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修)
2008年~ 東京女子医科大病院整形外科 入局
千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む
2013年 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得
2016年 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得
2016年~ 東名厚木病院 医長
脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる
2019年 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得
2024年~ 千葉県内 救急病院に入職
2025年 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得
学術活動

原著論文1

Incidence of Remote Cerebellar Hemorrhage in Patients with a Dural Tear during Spinal Surgery: A Retrospective Observational Analysis. 2019/04

症例報告

C5/6 hyperflexion sprainの1例 2018/06

原著論文2

環軸関節亜脱臼の診断におけるトモシンセシス撮影の有効性 2017/08

原著論文3

人工股関節全置換術を要した遅発性脊椎骨端異形成症の1例 2012

学会発表

  1. 強直性脊椎骨増殖症に発生した頚椎骨折に対して、前方固定術を施行した1例 (口頭発表,一般)
  2. MRI矢状断像における椎間孔部での狭窄の分類 (口頭発表,一般) 2013/04/25
  3. 脊椎手術において2本ドレンを留置することは術後の血腫による麻痺を防ぐことができるか (口頭発表,一般) 2013/04/25
  4. 椎体骨折偽関節症例に対するBalloon kyphoplasty施行後の隣接椎体骨折危険因子に関する検討 (口頭発表,一般) 2013/04/25
  5. 肩甲上神経絞扼を認めた肩甲切痕部ガングリオンの1例 (口頭発表,一般) 2012/06/23
  6. 外反母趾術後に出現した足底部痛の1例 (口頭発表,一般) 2010/11/16