目次
脊椎の圧迫骨折には、原因により大きく3つに大別されます。
- 骨粗鬆症を背景に、軽微な転倒により骨折する骨粗鬆症性の骨折
- 高エネルギー外傷による外傷性の骨折
(外力が強くて骨が強くても骨折) - 外力すらなくとも、自然に圧壊して骨折する病的な骨折
(腫瘍の転移など)
高齢者では骨粗鬆症に気がつかず「いつのまにか骨折」や、「椎体骨折の連鎖」をすることがあります。これは①に該当します。
背骨を骨折した場合の治療期間
背骨を骨折した場合の治療期間は、一般的に長くなります。骨折部が圧壊といって、段階的に潰れ続けるとさらに長くなります。それぞれに分けて説明します。
①骨粗鬆症など高齢者に多い圧迫骨折
全治の目安ですが、腰椎椎体骨折は少なくとも半年以上経過を追う事が多いです。
骨粗鬆症の背景がある場合、骨粗鬆症の加療が骨折を契機に始まります。
結局、「骨粗鬆症で1-3か月に一度は外来に行き治療し、レントゲンで骨折を追いかけるのは骨折してからだいたい6か月程度になる」状況です。経過がいい場合は3か月程度で撮影を終える医療機関もあります。
②事故やスポーツによる外傷性骨折
事故やスポーツによる外力は高エネルギー外傷と言われ、高齢者だけではなく若年者でも骨折します。
チアリーダーが高所から落ちる、バイクで車とぶつかる、山登りで高所から誤って落ちてしまうなどの場合もこれに該当します。レントゲンやCT,MRIで診断していきます。
この骨折の場合は多くは脱臼、神経障害を伴う、または破裂骨折という不安定な骨折型であり、多くは手術が必要となります。
高エネルギー外傷での骨折で大まかな治療推移を述べます。
脱臼、神経障害、破裂骨折を伴わない骨折
3か月ほどコルセット治療をして、定期的にレントゲンを撮ります。やはり最低でも1年ほどは見ていきます。
脱臼、神経障害、破裂骨折を伴う骨折
手術は可及的速やかに行われます。金属固定手術といって、背中を一部切って、金属のスクリューやロッドと呼ばれる長い金属の棒で連結します。
この意味は、骨折椎体に力がかからないように金属で連結した範囲の構造体全体で荷重をうけて骨折治癒を促進します。
神経障害は不安定な背骨だとさらに悪化するため金属固定しておくことで神経障害を鎮めるといった効果もあります。
術後はコルセットを行い手術後1年ほどで金属を抜去する事が多く、受傷から1年以上は外来で治療していく形になります。
③腫瘍の転移などによる病的骨折
軽い転倒や、転倒すらなく自然圧壊を伴う骨折では、癌の脊椎転移を整形外科医が最初に見つけてしまう事がしばしばあります。
多くの方は、自分が癌とも知らない方で、骨折した時点では、stageが進行しています。
それからの治療の推移は以下のようになります。①~④を同時並行で進めていき、「自院で治療か、他院で治療か」、「どこまで治療するか」を決めます。
- 骨折治療をどうするか決める
手術 or 保存療法が痛みをとるのに一番最適かを検査結果から判断します。 - 原発巣探しを並行して続ける
腫瘍マーカー採血、全身CT、骨シンチグラフィ、PETなどを行います。原発治療なしに回復はしません。癌は悪性のイメージがありますが、すぐに命をとられるものから、平均余命が長いものもあります。 - 予後はどれくらいか
予後は、原発巣を加療できる専門の先生とすり合わせ、癌種とstage分類、脊椎の障害部位などで決定していきます。 - 自分の病院で治療ができる原発巣か(専門家が院内にいるか)、
他院に紹介か
治療の最適化をはかります。
自院か他院か
手術は自分の病院で、原発巣の専門治療は他の病院というときもあります。
最初からすべて転院で受けれる場合もありますが、血液系の癌では、転院先で血液内科で化学療法はできるが、手術は施設上できないので施行してから転院してほしいといった場合も多いです。
どこまで治療するか
予後が短いと想定される場合、手術を選べない場合があります。ご家族と自宅で過ごす時間を減らさないように、治療しないで最後までできる在宅フォローをする事があります。
その場合には医療麻薬や、ブロック注射、装具治療が効果を出すこともあります。
予後次第で、残酷ですがどこまで治療介入するかが変わります。結果的にこの場合の椎体骨折に始まる治療期間は非常に長く、終わりがありません。
これについては、他の記事で初期の原発巣についてのまとめもありますので、参考にして下さい。
背骨を骨折した場合の入院期間は?
椎体を骨折した場合の入院期間は、その医療機関によります。
必ずしも入院で診ないといけないわけでもないのでほぼ全例入院できないという対応方針の医療機関がある一方で、痛みが辛ければすぐ入院対応してくれる病院もあります。
入院できて手術は必要としない場合では、高齢者の椎体骨折入院期間は概ね3-4週程度になる事が経験上は多いです。しかし入院してどんな治療をしてくれるかにもよって前後します。
また、急性期病院というところではすぐに転院してリハビリ病院で長く入院するパターンもあります。
背骨を骨折した場合の治療方法
背骨を骨折した場合には、原因により治療の方針が変わっていきます。
骨粗鬆症性の骨折
コルセットだけで済むような骨折の場合にはコルセットが1-3か月になります。
手術が必要になる場合、椎体にセメントを入れる手術や、金属性スクリューとロッド(棒)で連結させて治療する場合があります。術後に装具技師が作るコルセットを作成、装着します。
高エネルギー性の外傷性骨折
神経障害や脱臼がある場合には複雑な手術を行うことがありますが、基本的には手術では、椎体にセメントを入れる手術や、金属性スクリューとロッド(棒)で連結させて治療する場合があります。
手術になる確率は高いですが、装具技師が作るコルセットだけで治療できる骨折の場合もあります。
腫瘍転移での病的な骨折
腫瘍転移での骨折の場合も、予後がある場合には手術になる可能性は高いです。予後はどれくらいなら手術を決断するかについては、患者様と脊椎外科医により少し異なるので明記は控えます。
手術を必要としない骨折の場合、手術後の場合には装具技師が作るコルセットをつけて対応します。
原発巣により化学療法や、放射線治療が必要になります。ごく一部の患者様では重粒子線という治療を行う事もあります。
背骨の骨折の治療期間を長引かせないための注意点
大前提として、骨折しても放置しないことです。治療期間を長引かせないための注意点は適切な長さ、サイズのコルセットをきちんとつけるです。
意外と思われますが、適切につけて生活し続けることができない方が大勢いらっしゃります。
圧壊が進行し、骨折連鎖を繰り返してしまう原因になるときがあります。短い簡易的装具ではしっかり固定できないので、医師が適切に固定範囲を指示して装具技師さんが作る「保険医療でのオーダーメイド装具」を付けましょう。
また、骨折したあとに骨癒合を早める治療や、1年以内に他が骨折しないようにする骨粗鬆症治療も重要です。
まとめ
脊椎外科医として、大学病院や高速道路沿いの救急病院、そしてクリニックに至るまで、背骨の骨折治療に長年携わってきました。
骨粗鬆症性椎体骨折は整形外科医としてのライフワークであり、特に私は「高エネルギー外傷による椎体骨折」や「がん転移による椎体骨折」の治療にも数多くの経験を積んでいます。
高エネルギー外傷では、労災での高所転落や自殺企図による落下、高速道路での事故など、一瞬で人生が大きく変わってしまった方々の背骨や神経と向き合ってきました。
また、がん転移による骨折では、がん拠点病院にて各専門領域の医師と連携し、患者様の最期までの治療に関わる経験もしてきました。
単に手術を行うだけでなく、その後の症状の変化や課題、患者様やご家族の受け入れ、適切なリハビリテーションの選択、そして疼痛管理に至るまで、一貫して向き合ってきた経験値が私の強みです。
これまでの経験をもとに、椎体骨折やそれに伴う神経障害でお困りの患者様が少しでも前向きに、明るく生活できるようサポートしたいと考えています。お困りの際は、ぜひ一度、沼口までご相談ください。
監修
整形外科専門医Dr.沼口大輔
| 2006年 | 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修) |
|---|---|
| 2008年~ | 東京女子医科大学病院整形外科 入局 千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む |
| 2013年 | 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得 |
| 2016年 | 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得 |
| 2016年~ | 東名厚木病院 医長 脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる |
| 2019年 | 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得 |
| 2024年~ | 千葉県内 救急病院に入職 |
| 2025年 | 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得 |
Incidence of Remote Cerebellar Hemorrhage in Patients with a Dural Tear during Spinal Surgery: A Retrospective Observational Analysis
Spine Surgery and Related Research 3巻 2号
発行元 Spine Surgery and Related Research
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