骨粗鬆症の治療法|治療薬などについて整形外科医が解説

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骨粗鬆症とは、骨強度の低下が特徴であり、骨折リスクが増大しやすくなる骨格の病気の事です。
骨強度≠骨密度 ではないことが重要です。骨密度とは骨強度の70%と表されます。残りは骨の質(骨質)というものが骨強度に関与します。

骨強度=骨密度+骨質

骨粗鬆症は骨密度が少なく、骨質が劣化する事で骨折が起きやすい状態とも言えます。
加齢や閉経によるホルモン変化、生活習慣などが原因となり発症します。適切な治療を行うことで、骨折の予防や骨密度の維持・改善が期待できます。
本記事では、骨粗鬆症の治療法について運動・食事・薬物療法の観点から解説します。

骨粗鬆症の治療法

骨粗鬆症の治療は、以下を組み合わせて行います。

  • 運動療法
  • 食事療法
  • 薬物療法

基本は薬物療法が中心となりますが、骨は「生活習慣の影響を強く受ける組織」であるため、運動や栄養管理も非常に重要です。薬だけでは骨折予防は不十分であり、生活習慣の改善を含めた総合的なアプローチが必要です。

運動療法

運動療法の目的は「骨に適度な負荷を与えて骨密度を維持すること」と「転倒を防ぐ筋力をつけること」です。
歩行については1日の目安は女性6000歩、男性7000歩です。 以下のような運動をすると効果的です。

  • ウォーキング(1日6000~7000歩程度)
  • スクワット(下肢筋力強化)
  • 開眼片脚起立

骨は負荷がかかることで強くなります。特に下肢への荷重運動が重要です。一方で過度な運動は心肺機能に負担をかけるため、無理のない範囲で継続することが大切です。
詳しく知りたい方は、リンクを参照ください。

運動療法

食事療法

食事療法

骨を作るためには、十分な栄養摂取が不可欠です。主な栄養素は以下です。

  • カルシウム:
    牛乳、小魚、大豆、緑黄色野菜
  • ビタミンD:
    魚類(サケ・サンマ)、きのこ類
  • ビタミンK:
    納豆、緑黄色野菜
  • タンパク質:
    肉、魚、卵、大豆製品

カルシウムだけでなく、ビタミンD(吸収促進)やビタミンK(骨形成)も重要です。極端な食事制限は骨密度低下の原因となるため、バランスよく摂取することが必要です。

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薬物療法

骨粗鬆症の治療薬は、内服薬と注射薬に分かれます。注射薬には医療機関で行うものと自己注射があります。
作用機序により以下のように分類されます。

  • 骨吸収抑制剤(骨を壊す働きを抑える)
  • 骨形成促進剤(骨を作る働きを高める)
  • 両方に作用する薬
  • 補充療法(ビタミンなど)

患者の年齢、骨密度、骨折歴、合併症を踏まえて薬剤を選択します。

使い分けとしては、まずガイドラインというのを参考に、薬を選んでいきます。
骨吸収(古い骨を壊す反応)が強いのか、骨形成(新しい骨を作る)が弱いのかを判断して、その程度に応じて骨吸収抑制剤や、骨形成促進剤を行っていきます。
詳しい製剤については、リンクを参照ください。

骨粗鬆症治療薬

骨を破壊する働きを抑える薬(骨吸収抑制剤)

骨吸収抑制剤とは骨吸収を抑えることで骨密度低下を防ぐ薬です。第一選択となることが多いです。

内服薬

■ビスホスホネート製剤(週1回または月1回)

最も広く使われている骨粗鬆症治療薬で、破骨細胞という働きを抑えて、骨密度を高め骨折を抑制します。アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸などがあり、経口薬と注射薬が存在します。

服用頻度は週1回や月1回もあり、幅広く選択可能です。短期的には食道炎、長期的には非定型大腿骨骨折といって薬剤性に骨折することに注意が必要です。

注射薬

■ビスホスホネート

注射薬では、ボンビバ、リクラスト、リカルボン、ボナロンといった名前の製剤で行われています。
4週間に1回の静脈注射であったり、年1回の点滴であったりとバリエーションがあります。

■デノスマブ

プラリアという製剤名で浸透しています。
破骨細胞の働きを抑える注射薬。6ヶ月ごとに皮下注射し、骨密度増加が得られます。
低カルシウム血症を防ぐため、ビタミンDとカルシウムの併用が必要です。
デノスマブは強力に骨吸収を抑制しますが、中止時のリバウンドに注意が必要です。

骨の形成を助ける薬(骨形成促進剤)

骨を新しく作る作用を持つ薬です。

注射薬

■テリパラチド(毎日または週1回)

フォルテオ、テリボンという製剤名で浸透しています。
重症骨粗鬆症や骨折リスクが高い症例で使用されます。骨密度増加効果が強いです。

骨吸収と骨形成の両方に作用する薬

■ロモソズマブ(抗スクレロスチン抗体)

イベニティという製剤名で浸透しています。
骨形成促進と骨吸収抑制の両方に作用します。重症例や骨折リスクが非常に高い患者に使用されます(1年間投与)。

骨に必要な材料を補充または骨代謝をサポートする薬

  • カルシウム製剤
  • 活性型ビタミンD3
  • ビタミンK

単独で劇的な骨密度改善は期待できませんが、他の治療と併用することで効果を補助します。
凄くいい治療をしても、周辺治療をおろそかにすると結果は難しいです。強い骨粗鬆症治療薬を選んでも、補助的なこのような周辺治療は重要です。

骨粗鬆症の治療には生活習慣の改善も必要

骨粗鬆症の治療には骨に悪影響を与える生活習慣を変えて、骨に有益な生活習慣を取り入れていく形を勧めます。

■生活習慣の変化

摂取を避けた方がいいもの

骨粗鬆症の治療はいつまで続ける?

骨粗鬆症の治療は長期的に行う必要があります。
一般的には数年単位で継続し、骨密度の改善には6か月〜1年程度かかります。

治療を中断すると骨密度が再び低下することがあり、特にデノスマブ(プラリア)中止後は骨折リスク上昇が報告されています。医師と相談しながらビスフォスフォネートなどを継続することが重要です。
経年的に骨密度は落ちていきやすいため、中断後でも、補助療法を行ったり、半年後には骨密度を測定する事が多いです。

骨粗鬆症の治療をしないで放置するとどうなる?

骨粗鬆症を放置すると以下のリスクがあります。

  • 骨折(特に背骨・大腿骨)
  • 慢性的な痛み
  • 姿勢変形(後弯)
  • 寝たきり

特に大腿骨近位部骨折は要介護の原因となるため、早期治療が重要です。

骨粗鬆症の治療に関するQ&A

骨粗鬆症の薬には副作用はありますか?

それぞれの治療薬で注意点はあります。
例として、ビスホスホネートでは胃の不快感などが知られています。また、顎骨壊死という名称が過剰に意識されてしまい、ビスフォスフォネートやプラリアではとくに誤解が起こりやすいです。

顎骨壊死とは

顎骨壊死は「怖い名前」ですが、骨粗鬆症治療を受けている方での発症率は、日本の実臨床でも約0.1%(1000人に1人)前後とされています。つまり、多くの方に起こる副作用ではありません。

一方で、骨粗鬆症の薬を自己判断でいきなり中止すると、骨密度が低下し、骨折リスクが上がることがあります。特にデノスマブ(プラリア)は中止による骨量のリバウンド減少や多発椎体骨折のリスクが報告されており注意が要ります。

顎骨壊死の本質は、単に薬だけで起こる「骨が腐る病気」というより、歯周病・根尖性歯周炎・義歯による傷など、口の中の感染が関係する難治性の顎骨骨髄炎と考えられています。
したがって大切なのは、骨粗鬆症薬を怖がって中止することではなく、歯科で感染源をきちんと管理することです。

歯科治療中の方は、次のように考えます。

  • 骨粗鬆症薬を始める前
    口の中に痛み、腫れ、歯ぐきからの出血、歯のぐらつき、噛むと痛い、膿が出るなどがあれば、歯科で感染を確認・治療してから開始します。
  • すでに骨粗鬆症薬を使っている方
    抜歯などの外科処置が必要な場合でも、日本のポジションペーパー2023という発表では、基本的に予防的休薬は行わずに処置すると示されています。大切なのは、医師・歯科医師・患者さんで相談し、骨折リスクを高めないことです。

主な薬剤に分類してのまとめ

■ ビスホスホネート
休薬しない方針でいいです。理由としては、この薬剤は、休薬してもすぐには骨内濃度は変わらないので、「続けたまま歯科治療」がいいと考えられてきています。

■ デノスマブ
中止しないで使用をしてください。投与タイミング調整を必要とします。

  • 最終投与後3〜4ヶ月で処置
  • 治癒(6〜8週)確認後に次回投与

「止めずにタイミングで調整」すべき薬剤です。

Taguchi A. 骨粗鬆症治療薬による薬剤関連顎骨壊死(MRONJ). 薬事. 2025;67(15):3204-3209.

高齢者の骨粗鬆症では、何か特別な治療を行いますか?

基本は同じですが、転倒予防がより重要になります。筋力低下やバランス障害が強いため、運動療法と環境調整(段差除去など)を重視します。
90代になると、他の薬が多い事や年齢的に腎機能障害が起きている方がいるので、選べる薬が限られてきます。

またそもそも歩いていないなら無理に骨粗鬆症薬を飲み続けるのをやめるのも一つの手段だと私は考えています。

骨粗鬆症の治療が必要なのは、どのような症状ですか?

骨粗鬆症は症状が乏しいため、症状ではなく検査結果や骨折をきっかけに治療判断を考えます。
検査は保険の制度があり頻繁にはできません。1年に1-2回が一般的で、それゆえ1回の骨密度を正確に測定した方がいいです。正確性はどの測定方法でも同じではありません。

骨密度検査には実は検査方法が多種あります。自治体の健診項目ではDEXAでないものも提示されているときがありますが、検査精度が同じはありません。

なるべくガイドラインに沿って、DEXA検査をとれる医療機関で測定するのを私は勧めます。
骨密度低下や脆弱性骨折があれば治療対象です。

骨密度検査

骨折してからでも骨粗鬆症の治療は間に合いますか?

間に合います。むしろ骨折後は再骨折に対する不安やモチベーションが高い為、積極的な治療が受け入れやすいタイミングです。しかしその後多くの方が維持段階で断念する事に課題があります。

まとめ

骨粗鬆症の治療は、薬物療法を中心に運動・食事・生活習慣を組み合わせて行います。治療により骨密度の維持・改善や骨折予防が期待できます。症状が出にくい病気であるため、早期発見と継続的な治療が重要です。気になる方は整形外科での検査をおすすめします。

骨粗鬆症は「年齢のせい」だけでなく、ホルモン、生活習慣、病気や薬など多くの要因が重なって起こる病気です。骨粗鬆症が進行しきってしまい、骨粗鬆がひどくなっていると骨折を繰り返します。これは日常生活の質(健康寿命)を大きく落とし、それが連鎖すると最終的に寿命にも影響します

「閉経した」「背が縮んできた」「痩せていて運動不足」「ステロイドを長く飲んでいる」といった心当たりがあれば、整形外科で骨粗鬆症の相談をしてみてください。

また、女性だけではなく男性も注意がいります。適切な検査と治療により、「骨折して歩けなくなる」「骨折後に寿命が短くなる」リスクを減らし、将来の自立した生活を守っていきましょう。骨粗鬆症について不安がある方是非、沼口までご相談ください。

監修

整形外科専門医 Dr.沼口大輔

整形外科専門医Dr.沼口大輔

大学 2006年 東邦大学医学部卒 2025年 早稲田大学 大学院経営管理研究科(MBA)修了
資格、学位 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医 MBA(経営学修士)
職歴
2006年 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修)
2008年~ 東京女子医科大学病院整形外科 入局
千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む
2013年 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得
2016年 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得
2016年~ 東名厚木病院 医長
脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる
2019年 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得
2024年~ 千葉県内 救急病院に入職
2025年 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得
執筆・共著

Incidence of Remote Cerebellar Hemorrhage in Patients with a Dural Tear during Spinal Surgery: A Retrospective Observational Analysis

Spine Surgery and Related Research 3巻 2号
発行元 Spine Surgery and Related Research

65歳以下単椎体骨折症例にて2週間のベッド・アップ30°制限とした場合の,単純X線変化について

日本整形外科学会雑誌
(日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会抄録集)
94巻 3号

脊椎手術における術後頭蓋内出血についての検討

Journal of Spine Research 8巻 3号
発行元 日本脊椎脊髄病学会

上腕骨近位端骨折に対し腓骨骨幹部移植を行った2症例

JOSKAS 44巻 4号
発行元 日本膝関節学会

人工股関節全置換術を要した遅発性脊椎骨端異形成症の1例

関東整形災害外科学会雑誌 43巻 1号
発行元 関東整形災害外科学会