PRP療法とは?治療対象の疾患や効果について整形外科医がわかりやすく解説

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PRP療法とは?

PRP療法とは

PRPは成長因子といった成分が含まれており、組織修復や炎症を抑えて痛みを改善する効果があります。
PRPは成長因子といった組織の修復や炎症を抑えて痛みを改善する効果があります。

メリットとして、自分の血液を介した治療ゆえにリスクが低い事、実施後の生活やスポーツ制限がないことから、大きな手術をして入院しているといった方法にくらべて“時間”を大事にできる点でスポーツ選手にも好まれています。
また、PRPは体への負担が少ないので、何度も繰り返す選択を検討できる点も利点となります。

PRPの種類

PRPの種類については、PRPに加えて2025年現在では整形外科領域で一般的に提案され耳にしやすいのはPFC-FD治療APS治療です。
これらの違いはPRPの精製プロセスや成分、取り扱う医療機関と対象の部位の差があります。PFC-FD治療とは患者さん自身の血液を約50㏄採取し、血液の加工をセルソース社というところに委託します。

感染症の検査やフリーズドライ加工を行い粉末状の濃縮成長因子などを医療機関に配送します。治療直前に粉末を蒸留水で溶解し治療部位に使用できます。
無細胞化という処理をしており注射後の痛みは比較的少ないです。
APS治療は、当日に精製したPRPをさらに遠心分離・特殊加工することで、成長因子や炎症を抑える働きをもつタンパク質を、より高濃度に抽出します。

治療効果は長く効きやすい特徴があります。
区別がつきにくいとおもいますので、簡潔にまとめますとこのような差があります。

項目 PRP療法 APS療法 PFC-FD療法
概要 血液中のPRPを抽出、患部に注射 PRPをさらに濃縮させ、抗炎症物質と成長因子を高度に抽出 PRPから成長因子を抽出・凍結乾燥し保存可能
効果持続期間 3~6か月 最大24か月 ~12か月
費用(税込) 4万円程度 30万円程度 16万円程度
治療に要する期間 1日(外来のみ) 1日(外来のみ) 約1か月(製造期間3週間を含む)
メリット 副作用が少なく、何度でも受けられる(比較的安価) 高い除痛効果と長い持続期間が期待できる 成長因子が高濃度で含まれ、長期保存が可能
デメリット 効果の持続期間に個人差がある 費用が高い 一連の医療工程に時間がかかる

注)・価格は、治療を受ける医院や、受ける時期で変動するものなので注意してください(自由診療です)
・身近な診療所ではすべての治療は行えず、無細胞化している都合で煩雑な申請が不要なPFC-FDが主に導入されている場合が多いです。

整形外科におけるPRP療法の対象

治療が適応となる疾患

 
  1. 変形性膝関節症
  2. 筋、腱、靭帯損傷

病名で言いますと、上腕骨外上顆炎(テニス肘)や上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)、膝蓋腱炎、野球肘、アキレス腱炎、足底腱膜炎、肉離れ、腱鞘炎、腱板炎などです。

治療が受けられない人

PRP(多血小板血漿)療法を受けられない方はこのような方です。

  • 血液疾患やがんの診断を受けている方
    がん患者や既往歴のある患者には推奨されません。血液を介した治療ゆえに血液に機能の問題があると考えられるからです。
  • 自己免疫疾患治療中の方
    自己免疫疾患を有する患者では、PRPの成長因子が炎症を悪化させてしまう場合があり慎重に検討する必要があります。
  • ステロイド薬を服用中の方
    ステロイド剤を使用している方は、PRP療法を受けられないことがあります。
    ステロイドがもたらす膝関節の注射後感染のリスク上昇を懸念します。
  • 患部に感染がある方
    局所に感染がある方は、PRP治療を受けることはできません。
  • 抗凝固薬を服用している方
    ワーファリンなど抗凝固薬を服用している方は、PRP治療を受けることはできません。
    これも薬による凝固機能変化によりPRPの効能に影響があるからです。
  • 重度の糖尿病を患っている方
    重度の糖尿病を患っている方は、感染症リスクの問題で、治療を受けられない事があります。

【疾患別】整形外科のPRP療法の効果

膝の痛み

変形性膝関節症については、従来では軽度の障害の方には、薬、リハビリ、ヒアルロン酸の関節内注射で治療していました。高度の障害の方には、人工関節をはじめとする手術で対応していました。
その中間にあたる治療というのはしっかりしたものが存在せず、PRP治療は中等度の患者様に向いていると言えます。

「手術はしたくないけど、従来の治療に満足できない痛み」がある患者様がちょうど合っているといえます。レントゲンの分類でKL分類というものがあり、それを参考に、中等度の患者様を分類、確認して治療を行っていきます。

効果については、たとえば一般的になってきているPFC-FDについては治療後2週間~3か月で効果の出現が期待できますが、逆を言えば効果発現に少し時間がかかるとも言えます。
また、治療効果には個人差があります。手術を遅らせるまたは、手術を回避できることが可能な場合には治療効果として高いと言えると私は考えています。

変形性膝関節症の治し方
膝の痛みで整形外科を受診すべき理由と病院で出来る検査・治療について

腰痛

難治性の慢性腰痛や術後の遺残腰痛に対して腰部にPRPを注射するクリニックはございます。
その場合でも、保険診療内での治療を一通り行って、それでも厳しいときに上がってくる治療となりますが、自由診療であること、効果に個人差があるのでしっかり悩んでからの決断をされるといいです。

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スポーツ外傷・傷害

スポーツ障害では大谷選手をはじめとして、PRP治療を利用する選手がいます。炎症をおさえる効果が高い事、手術などで戦線離脱しなくていいこと、自分の血液であり有害反応が少ない事から好まれています。

PRP療法は安全?副作用はある?

大きなものは基本的にはないのですが、注射後の腫れ、熱感、痛みについては報告があります。
PFC-FDでは1.1%と低く、APSでは67.3%と報告されている論文もあります。
これはPF-FDが無細胞化という処理を行っているから炎症が起こりにくいとも言われております。APSでは長く効く分、初期の多少の腫れなどは多いという状況は言えるかと思います。

整形外科でのPRP療法の流れ

PFC-FCを例にとって治療の流れを説明します。

  1. 受診の予約整形外科担当医の外来を予約
  2. 初回診察症状確認とPFC-FD療法の適応判断
  3. PRP外来(1回目)血液(約50ml)を採取、感染症検査
  4. 3週間待つPFC-FD製造期間
  5. PRP再生医療外来(2回目)PFC-FD注射と経過観察
  6. 定期的に治療後診察

PRP療法が受けられる整形外科の探し方

PRPは、沢山の病院やクリニックで行われております。価格についてもまちまちですが、私は説明に重点を置いていかれるといいと思います。
自由診療ではありますが、自由診療特化型クリニックで治療される場合、うまくいかないときにそれ以外の選択肢が提示しにくいので、一連の治療の中でPRP治療をいれていく「ハイブリッド型(保険診療クリニックで自由診療も行っている)」での治療の有用性を感じています。

治療選択肢がPRPだけでなくそれがうまくいく、いかないときに次の治療の選択肢を考えているクリニックというのが頼るといい場所ではないでしょうか。その時に納得感をもって治療できるように、治療を良く説明してくれる先生が一番いいと思っています。

整形外科の選び方とは?

PRP療法の費用はいくら?保険は適用される?

  • PRPは保険ではありません。今後保険適応になる見込みも今のところ不明です。(2025年2月現在)
  • 費用については1-1の表を参考にしてください。
    (自由診療は価格変動可能なので、常に変わっていきます)

まとめ

整形外科とPRPについては注目されている領域です。PRPが関与するスポーツ障害や、変形性膝関節症では手術技術だけでなく、患者の状態を的確に見極め、クリニックでできる最大限の治療を行って厳しければ、適切な専門家へ繋げる医師が必要とされています。
私は神経(脊髄)も得意とし、膝を含めた整形外科手術の経験を積んできました。

MRIを活用し、正確な診断と最適な治療を提供したいと考えています。また、私が診療の合間に卒業した早稲田大学の大学院の修士論文では、PRPを題材に、研究発表、論文化をしています。PRPをはじめとした再生治療はいい治療オプションであり、患者様が安心して受けられるシステムの構築を目指しています。
あなたの痛みでできない事やあきらめた事を受け止め、理解した上で、「悔しさ」を「笑顔」に変えていきましょう。

監修

整形外科専門医 Dr.沼口大輔

整形外科専門医Dr.沼口大輔

大学 2006年 東邦大学医学部卒 2025年 早稲田大学 大学院経営管理研究科(MBA)修了
資格、学位 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医 日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医 MBA(経営学修士)
職歴
2006年 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修)
2008年~ 東京女子医科大病院整形外科 入局
千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む
2013年 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得
2016年 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得
2016年~ 東名厚木病院 医長
脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる
2019年 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得
2024年~ 千葉県内 救急病院に入職
2025年 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得
学術活動

原著論文1

Incidence of Remote Cerebellar Hemorrhage in Patients with a Dural Tear during Spinal Surgery: A Retrospective Observational Analysis. 2019/04

症例報告

C5/6 hyperflexion sprainの1例 2018/06

原著論文2

環軸関節亜脱臼の診断におけるトモシンセシス撮影の有効性 2017/08

原著論文3

人工股関節全置換術を要した遅発性脊椎骨端異形成症の1例 2012

学会発表

  1. 強直性脊椎骨増殖症に発生した頚椎骨折に対して、前方固定術を施行した1例 (口頭発表,一般)
  2. MRI矢状断像における椎間孔部での狭窄の分類 (口頭発表,一般) 2013/04/25
  3. 脊椎手術において2本ドレンを留置することは術後の血腫による麻痺を防ぐことができるか (口頭発表,一般) 2013/04/25
  4. 椎体骨折偽関節症例に対するBalloon kyphoplasty施行後の隣接椎体骨折危険因子に関する検討 (口頭発表,一般) 2013/04/25
  5. 肩甲上神経絞扼を認めた肩甲切痕部ガングリオンの1例 (口頭発表,一般) 2012/06/23
  6. 外反母趾術後に出現した足底部痛の1例 (口頭発表,一般) 2010/11/16