目次
交通外傷後に下肢のしびれがおきることがあり、神経の障害を疑うことがあります。
一般的に言われているむちうち(外傷性頚部症候群)では、頸部や上肢の症状が多いのですが、下肢まで症状を伴うようになってくると診断が異なってくることもあり、注意が要ります。
むちうちで足のしびれが起こる原因
外傷性頸部症候群(むちうち)は、画像上の問題といった他覚所見に乏しく、自覚的な症状が中心となる状態です。
後頸部痛を主訴とし、頭痛やめまい、吐き気など多彩な症状を伴うことがあります。
むちうちで障害の主となる頸椎には、脊髄(神経)があります。これは、頸部や上肢に対して優位な症状を出しますが、下肢や陰部にも影響する神経が通っています。
神経が影響をうけた場合には、脊髄の影響でも下肢のしびれが出ることがあります。
神経圧迫による足のしびれ
交通事故で、神経圧迫症状による下肢のしびれがはっきりした場合には、筋力や腱反射という検査も行います。
レントゲンに加えて必要時にMRを行い、外傷性の頸椎椎間板ヘルニアが後日はっきりする場合には、診断名が外傷性頚部症候群(むちうち)から変わっていきます。
つまり外傷性頚部症候群(むちうち)はあくまでも画像上の問題がみられないのが前提なので、下肢のしびれや運動麻痺があってMRIでの神経圧迫所見がある場合には、むちうちとは異なる病態になります。
むちうちだけで脚までしびれることは基本的には少ないと考えて頂いた方がいいです。
またしびれは主観的な症状なので、客観的事実(画像や臨床所見)が交通事故処理には必要不可欠です。
しびれがあると訴えるのは、診療記録上は問題ないのですが、医師を含めた他人がしびれの可視化ができず主観評価以上にはならない症状であることをご理解ください。
特に事故の場合はしびれの取り扱いには注意が要ります。
血流障害による足のしびれ
交通事故にて、下肢が車内でシートと車側との間に挟まったといった場合には、下肢の血流が悪くなり腫脹、血流障害、下肢のしびれを伴うことがあります。
一般的な軽い衝突事故では、上半身においては頭が振られる形でありむちうちで首の症状だけの場合が多く、車体が大破していないと下肢は挟まれていません。
むちうちになるような外傷で下肢が血流障害まで起きてしまう可能性は少ないです。
むちうちによる足のしびれの症状は?
むちうち(外傷性頚部症候群)という病名で下肢がしびれることはほとんどない、その理由は画像評価で問題あれば、それはむちうちではなく病名がそもそもかわるから新しい病名にたいする症状であると説明しました。
実際の医療現場ではむちうちの方で、一時的なしびれが下肢に出る事を訴える患者様は一定数いらっしゃります。
しびれという表現は、触っても鈍い感覚をしびれという方や、ピリピリした感覚をしびれという方もいて差が大きいです。
ここからは私見ですが、交通事故においてブレーキを急に思い切り踏むことで、下肢の筋内圧が上がって、血流障害はなくとも下肢しびれを受傷から初期に感じる方がいると考えています。
下腿の筋肉痛がひどい人で右膝以下がしびれるという言い方の方が多く、一時的な筋緊張が時間とともに解除されれば改善しやすいと説明しています。
足のしびれはいつまで続くのか
交通事故後に下肢が腫れてしびれている場合
事故で脚をぶつけたり、ブレーキを踏みこんで下肢が腫れている方で下肢にしびれを感じる方がいます。
約1-2週で多くの方は改善しやすいです。これは外傷を受けて一時的に発生していると考えられるので、急性期の局所(下肢)の腫れが落ち着けば末梢の神経の環境もよくなり症状が落ち着いていきます。
イメージとしては「肘の内側をぶつけると指先までしびれが響く」といった身近なものの下肢のバージョンに近い状態です。
表面に近い神経が外傷に伴い一時的に興奮状態であると考えられます。
頚髄の影響(むちうちが影響だろうと患者様が考える場合)で下肢が痺れている場合
MRIなどの検査を行い神経圧迫の原因をみる必要があります。
外傷性にヘルニアがあっての場合では病名も異なり、根本の治療が奏功しないと症状の軽減が難しい例もありますので、改善までには個人差があります。
検査して神経圧迫もない場合には、2-3週間程度で改善する例も往々にしてあります。
ただし、「MRIで神経圧迫がみつかる=外傷性ヘルニア」と必ず認定されるわけではないので注意がいります。
保険会社に過去のヘルニアの可能性も質問されることがあり、判断は慎重に証拠をもって判断できる範疇で行っていく形です。詳しくはご担当の先生に聞いてみてください。
むちうちによる足のしびれを放置するリスク
交通事故後に一度病院にて頸椎捻挫または外傷性頚部症候群(いわゆるむちうち)と診断された方で下肢のしびれがある場合には、まずは検査を希望したり、定期的に医師にはかかってみましょう。
しびれは時間経過と共に改善する例も多いです。それゆえ経過観察判断といって医学的判断であえて何もしないで推移を追う場合もあります。
また、状況に応じて内服を出す先生もいて、その場合には末梢神経障害薬のビタミンB12(メチコバール、メコバラミン)を処方していく場合が多いです。
このしびれを放置すると必ず悪化するわけではありませんが、症状悪化していく状態ならばまずは放置せず医師に症状相談を続けてください。
むちうちによる足のしびれの検査・診断方法
交通事故後の下肢しびれは、一般的なしびれの精査と同様に検査を組み立てます。①~③にわけて説明します。
- 首の神経症状に判断できるとき
様々な診察所見から首を疑う時には、頸椎レントゲン、頸椎MRI検査を主に行います。頸椎MRIは必須ではありませんが、長く続く場合には検討が必要です。必要時電気生理学検査というものを併用します。 - 坐骨神経痛のような症状に判断できるとき
腰の神経がもともと狭い方で、交通事故の外傷を契機に坐骨神経症状が「悪くなる(悪化)、出てくる(表面化)、ずっと続く(定常化)」する方がいます。
この場合には頸椎の精査に加え腰椎の精査が必要になります。腰椎レントゲン、腰椎MRI検査を主に行います。腰椎MRIは必須ではありませんが、長く続く場合には検討が必要です。必要時電気生理学検査という検査を併用します。 - ブレーキを踏んだ後に下肢が腫れるなどで末梢神経による症状に判断できるとき
①、②を否定していく過程になります。また、胸椎での神経症状で下肢のしびれの時もあるのでその否定目的に胸椎のMRIをとることも追加することがあります。
むちうちによる足のしびれに対する治療と通院先
交通事故で外傷性頚部症候群(いわゆるむちうち)の後に下肢のしびれがある場合、整形外科にまずは相談ください。
整骨院や接骨院は手を使った治療は得意な方がやっていますが、検査や書類作成は医療施設ではないのでできません。
交通事故は相手と常に係争する可能性があるので、きちんと適切な時期に検査をしていかないと患者様に不利益が起きる事があります。
順番を間違えて、整骨院でしばらく治療してから医療機関に行くといった場合に事故初期の大事な時間に空間ができてしまうのは書類上あまり勧めません。
整形外科で行う治療法
むちうち(外傷性頚部症候群)に対して行う治療には、薬の処方、患部への注射、リハビリ、ヘルニアなど病名が変わった際に必要時には手術などです。
主に医療機関で重要なのはリハビリの機能です。リハビリについては以下のリンクをご参照ください。
治療期間の目安
一般的な症状の治療期間の目安は3ヵ月程度です。
これは骨折や脱臼がないむちうち(外傷性頚部症候群)においては筋肉の痛みとそれにともなう末梢神経の環境変化がひいていくのに相場としてこれくらいの時間を要する事が多いです。
しかし事故は組み合わせにより外力の違いがあり、加療期間も異なります。
例として、駐車場で減速状態のいわゆる“軽い接触事故”の方がうけるむちうちの外力と、ダンプカーにて高速道路で突っ込まれてのむちうちの外力は当然異なるので、同じ病名でも加療期間が長くなることもあります。
治療期間については、事故状況、検査結果、痛みやしびれの推移といったものを総合的に医師が判断して決めていきます。
一般的な見込みとして以下のように伝える事が多いです。
「むちうち(外傷性頚部症候群)であれば、軽度の場合は数週間、まれに重度の場合は6ヵ月以上かかる場合もある。目安として3か月くらいであることが多い。」
まとめ
むちうち(外傷性頚部症候群)と聞けば、「交通事故」「首の症状」を連想されるかと思います。
下肢のしびれについては、診断が本当にむちうちで間違いないのかから疑っていく目が必要です。
交通外傷については、高速道路近くの救急病院や大学病院でキャリアを積んできたので、軽微な交通事故からおぞましい事故まで沢山の方々の治療に携わらせて頂きました。
多くの方は、楽しい行楽予定や仕事のスケジュールが一瞬の事故で大きく変更されて、大変な思いをした被害者の方々でした。
初期治療の後にきちんと見続けないとさらに事故後も頸部に痛みが長く残る状態となり患者さんが苦しむことは多く、適切なタイミングに適切な医療を行うことの重要性を感じています。
さらに交通事故によってひきおこされるむちうちの場合には、相手がいる場合が多く憎悪のコントロールも痛みに影響してしまいます。
すべての痛みがなくなるわけではない方もいますが、現状の辛さを軽減・解決できる手段を提示していきますので、是非沼口までご相談ください。
監修
整形外科専門医Dr.沼口大輔
| 2006年 | 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修) |
|---|---|
| 2008年~ | 東京女子医科大学病院整形外科 入局 千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む |
| 2013年 | 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得 |
| 2016年 | 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得 |
| 2016年~ | 東名厚木病院 医長 脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる |
| 2019年 | 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得 |
| 2024年~ | 千葉県内 救急病院に入職 |
| 2025年 | 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得 |
Incidence of Remote Cerebellar Hemorrhage in Patients with a Dural Tear during Spinal Surgery: A Retrospective Observational Analysis
Spine Surgery and Related Research 3巻 2号
発行元 Spine Surgery and Related Research
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