目次
腰や下肢に痛みやしびれがみられる場合、腰椎椎間板ヘルニアが関与していることがあります。
腰の骨と骨の間には椎間板という組織があり、その椎間板の内部にある髄核が突出して神経を圧迫することで症状が生じます。椎間板ヘルニアは若年者から中高年まで幅広い年代にみられる疾患です。
椎間板は遺伝的要素や、加齢とともに変性が進行し日常生活動作や腰への負荷を契機として発症することがあります。
腰椎椎間板ヘルニアの診断にはMRI検査が必要?
腰椎椎間板ヘルニアにはMRI検査が最適です。しかし症状が軽くすぐに症状改善する方もいるので、全員のヘルニア疑いの患者様にMRIは必要ではありません。
ヘルニアはレントゲンで写るのか?
腰椎椎間板ヘルニアは、身体診察をしてレントゲンを撮影しても見えませんが、推測はできるサインもあります。つまり、レントゲンと身体診察だけでは「ヘルニアがあるか疑わしい」状態です。
患者様が納得できるために硬膜(神経)とヘルニアの位置関係を「可視化」するにはMRIが有用です。レントゲンではどちらも患者様が見てわかるほどに撮影不可能なのが理由で、納得しにくいからです。
レントゲンはムダか?
レントゲンは決して無駄ではありません。レントゲンは「椎体の不安定性」という唯一無二の検査項目もあり、MRIとレントゲンが連動すると、ヘルニアがある場所の治療計画も変わるくらいなので決して色あせない検査です。
ヘルニアのMRIとCTの違いは何ですか?
一般的なCT検査についても、「硬膜(神経)がそれなりにシルエットは少し映るが、ヘルニアが出ているかはわからない」状態です。
椎間板の状態、硬膜(神経)の圧迫状態についてはMRIでないと判断できない情報が沢山あります。CTは最終的に執刀するDrにとっては必須です。手術の計画を練る段階ではとても重要な検査になります。
腰椎椎間板ヘルニアの何がMRI画像でわかるのか?
MRIでわかるのは腰椎椎間板ヘルニアの「高さ・大きさ・左右の位置・タイプ・その他の病気との鑑別」です。
腰椎椎間板ヘルニアについて、MRIを撮影すると確認できること
- ヘルニアの高さ(神経障害の高さ、どの神経根か)
- ヘルニアの大きさ(volume)
- ヘルニアの左右の偏在(右or左)
- ヘルニアのタイプ(外側かどうか)
- 既存の腰部脊柱管狭窄症の影響がどれくらいあるか
- 転移性腫瘍や、神経圧迫をするほかの原因がないか例:椎間関節からの関節の水腫や、神経の周りの脂肪が神経を圧迫し過ぎているかなど
ヘルニアの高さ
ヘルニアは、過去に治療は保存療法(手術を選ばないで対応)で済んでいる方が沢山います。
MRIを撮影すると過去にヘルニアを指摘されている方の場合には、「過去のヘルニア」か「今回新しく別のヘルニア」かを疑ってみなくてはなりません。
ヘルニアは高さによって脚のどこに症状が出るかが異なります。神経症状とMRI画像をみて今回の原因の部位を絞り込むことができます。
手術の部位を決めたり、神経ブロックでどこの神経の治療をしていくかを決めるきっかけになります。
ヘルニアの大きさ
ヘルニアの大きさが大きすぎる場合には、神経症状が高度な「尿が出ない、気張っても便が出ない」といった膀胱直腸障害までおきてしまう可能性を考えて手術を勧める説明を強めに行うきっかけにもなります。
逆に小さいヘルニアの場合には様子が見れそうだと話すこともあります。
ヘルニアの左右の偏在
文字通り、MRIを撮影すると、見つけたヘルニアが症状と逆側であった場合にはヘルニアが今回の症状の原因ではないと考えていくきっかけになります。
梨状筋症候群といってそもそも腰のヘルニアではなく別の病気を考えていったり、外側ヘルニアといって少し珍しいタイプのヘルニアかなどをわかるようになります。
ヘルニアのタイプ
ヘルニアには一般的には硬膜(神経)のいる背中側に飛び出る場合が多いですが、外側ヘルニアといって、外側に飛び出る場合があります。
外側の場合、障害される神経が異なり、手術を行うときにも別のプランを練っていく形になります。イラストは断面図で、硬膜(神経)はグレーになります。髄核成分のヘルニアが青いものです。
他の病気が併存しているか
腰部脊柱管狭窄症といって、硬膜(神経)が全周性に狭窄する病気が併存していて、その影響があるかを判断したり、転移性椎体腫瘍といって、癌の転移が偶然見つかるなどがあります。
ヘルニア以外の病気もレントゲンと異なり細かく分類したり、診断ができます。
MRIでヘルニアがたまたま見つかり、大きい場合は重症?
実は無症状の人もいます。一般的には大きなヘルニアは強く長い症状を起こして、小さなヘルニアでは症状は短期で回復しやすいと診療経験においては感じます。
しかし神経は不思議なもので、「ヘルニアが凄く大きくても症状が少ない人」もいれば、「ごく小さなヘルニアで、激烈な症状を出す人」もいます。
神経の耐久性は個体差が大きいと言わざるを得ないので、ヘルニアの大きさだけで悲観する必要まではありません。
軽症の腰椎椎間板ヘルニア(膨隆型)
ヘルニアには、飛び出し方に4種類ほど種類があります。
軽症かどうかについては画像だけでは判断できないのですが、少さいヘルニアで画像がごく軽度で軽症になりやすいのは①の膨隆型です。
膨隆型は常に軽症ではありませんが、一般的に軽症なヘルニアは「保存療法で、改善に向かいとくに運動麻痺や感覚麻痺を残さない」ものを指し、膨隆型はそれになりやすいと経験則から考えています。注意として、医学的には「軽症ヘルニア」という分類はありません。
中等症以上の腰椎椎間板ヘルニア(突出型、脱出型、遊離型)
中等症以上という表現も前述した通り、画像と合わせて判断しようとしても画像だけでは言い切れません。
一般的には「保存治療でも痛みやしびれといった症状が取れず、日常生活障害が続くもの」という状態です。画像上そのような例になりやすいものとして、②突出型、③脱出型、④遊離型でヘルニアの大きさがとくに大きいものが該当しやすいです。
突出型と脱出型は、靭帯を打ち破って出ていくかどうかで区別します。遊離型については、こぼれてしまうと小さくなる確率が少し高いので、必ずしも症状が強く出ない時もあります。
時間経過とともにヘルニアが消退しない場合には遊離型でも中等度以上の症状を出してしまう例があります。中等症以上の症状は、筋力麻痺、感覚麻痺、排尿排便の障害です。
腰椎椎間板ヘルニアのMRI検査の流れ
スタートからMRI検査にて来院したケースを想定して、流れを説明します。
来院されますと、以下のような流れが一般的です。
- 受付
- 着替え
- 金属探知機、注意事項確認
- 体位固定、検査開始
- 退室、着替え
このような流れで終了します。全体として25-30分程度の医療機関が多いと思います。
検査後は?
- 当日にMRI説明の場合
検査後に担当の医師の外来に行く事になります。画像構成作業、送信業務、さらには医師が結果を読み解く時間が終わった後に呼ばれますので、検査後すぐに説明できるわけではございません。 - 後日MRI説明の場合
会計に進む形になります。
MRIの詳しい説明をご希望の方は、ぜひ以下のリンクを参考にしてください。
MRI検査費用の目安
保険診療の場合には3割負担で5000円程度、1割負担では1800円程度になります。これは単純に検査のみの額面で提示しています。(診察料などは別でかかります)
MRIで異常なし・ヘルニアじゃなかった場合の注意点
多くの患者様は坐骨神経痛の原因を調べるために腰椎MRIを撮影し、症状に合うヘルニアの有無を確認します。
MRIで腰椎に明らかな異常がない場合は、坐骨神経痛の原因を腰以外にも考える必要があります。神経は圧迫がなくても炎症によって急に痛みが出ることがあります。
「坐骨神経痛=すべて腰椎ヘルニア」ではありません。代表的な別の原因として梨状筋症候群があり、坐骨神経が臀部の梨状筋付近で炎症を起こして痛みを生じます。この場合は、リハビリによる臀部ストレッチや炎症を抑える治療で改善することがあります。
MRI結果に基づく腰椎椎間板ヘルニアの治療方針
治療方針は、患者様の痛みの程度がひどすぎる場合を除いては、ガイドラインに準じて治療するのが一般的です。
「保存加療(手術以外の治療)を3か月やってみる」というもので、ヘルニアが小さくなることもあります。
ほとんどは同じサイズのままでも神経の炎症は収まり、症状は改善していく例があります。MRI結果が治療方針に及ぼす影響について私見も含め述べます。
MRIは治療方針に関係ないのか?
MRIによって治療方針が変わることはあります。とくに手術を検討するタイミングが早まることがしばしばあります。
理由として、ヘルニアが大きい場合、排尿・排便障害が残るリスクや、脚の筋力低下が固定してしまう可能性があるためです。この状況で保存治療に固執しすぎると、回復の機会を逃し症状が定着する恐れがあります。
「ヘルニアは自然に小さくなることがある」のは事実ですが、小さくなるのにも限界があります。
もともと大きすぎる場合や、痛み・しびれが進行するケースでは自然消退は期待しにくく、早期手術を検討する判断材料となります。
腰椎椎間板ヘルニアのMRIについてのQ&A
MRI検査に痛みはありますか?
痛みはありません。MRIでは、検査部位(局所)に少し温かさを感じる方はいます。狭いところが苦手な方は精神的につらさを感じる事はありますが、身体的に何か痛いことはありません。
MRI検査では放射線を使いますか?
MRIでは放射線を使用しませんので心配しないでください。整形外科で放射線を使う検査は、レントゲン撮影、CT、骨密度検査です。
MRIの検査結果が出るまでにどのくらいかかりますか?
MRIの検査結果が出て整形外科医が見るまでには、医療機関によって異なりますが撮影後約20分程度で画像が出来上がります。
整形外科医が内容把握して、外来の混雑状況に応じて診察室に呼ぶため、合計で検査から30分前後はかかるとみて頂いた方がいいと思います。
また稀な画像が判明したり通常と異なり判断に迷うときには、放射線科レポートという別の科の先生のレポートを待つ場合があります。その場合には+1週間ほど時間がかかることもあります。
まとめ
腰椎ヘルニアは私が整形外科医、脊椎外科指導医として沢山の方に関わらせていただいた領域になります。
診療ガイドラインは常に参考にしますが、それだけにとらわれず過去の自分の手術経験、再発へのフォローアップの仕方など、それぞれの患者様のケースに合わせて提案を変更できるので相談ください。
また、私が手術治療で行えていなかった領域の最先端の内視鏡治療についても、希望や適応に合わせて都内の大学病院で執刀されている知り合いの先生を紹介させていただきます。まずはそこまでに行かないように、内服を中心とした治療を行います。
それでもひどいときは、私が得意とする神経根ブロック注射とリハビリの相乗効果で、社会復帰の不安を取り除きたいと思います。
監修
整形外科専門医Dr.沼口大輔
| 2006年 | 東邦大学医療センター大橋病院 入職(初期研修) |
|---|---|
| 2008年~ | 東京女子医科大学病院整形外科 入局 千葉こども病院、国立がん研究センター築地病院ほか関東近県の複数関連施設にて研鑽を積む |
| 2013年 | 日本整形外科学会認定 整形外科専門医 取得 |
| 2016年 | 日本整形外科学会認定 脊髄病医 取得 |
| 2016年~ | 東名厚木病院 医長 脊椎外科手術年間100件執刀、外傷手術年700~800件に携わる |
| 2019年 | 日本脊椎脊髄病学会脊椎外科指導医 取得 |
| 2024年~ | 千葉県内 救急病院に入職 |
| 2025年 | 早稲田大学大学院(経営管理研究科:MBA)学位取得 |
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Spine Surgery and Related Research 3巻 2号
発行元 Spine Surgery and Related Research
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